苦悩・失敗・挫折を乗り越え、立ち上げ4年で74億円の売上を出した社長 「だれかの言葉で人は変われる」VALX誕生までの10のターニングポイント
6.トップ入社から一転、やりがいを見出せないサラリーマン時代にもらった上司からの言葉。
3万5000人の応募のうち、キーエンスに入社できたのは180人。そのうち成績上位者15名のスーパーエリートは配属される部署も特別だったという。只石さんもそのひとり。ところが、入社後の只石さんにとってのモチベーションは、いかにサボるか。頑張らずに800万円もらえることを目標に掲げた只石さんは、みんなが残業するなかひとり定時で退社し、遊びへ繰り出す。望んで、努力して、成績上位で入社した一流企業でも、只石さんにとっては居場所がなかった。いつしか、夢をもってキーエンスを去って行く人たちを羨ましく見るようになっていた。そして、只石さんは何か手がかりを探すようにキーエンスを退社した人たちに会いにいく。 「辞めた先に何があるのだろうと会って話を聞きましたが、転職して年収が下がっている人ばかり。やっぱりキーエンスに居続けるしかないと思いました」 やり場のない思いを抱えて働き続ける只石さんに、あるとき、唯一信頼していた上司からこう言われた。 「お前はここにいる人間じゃない。もっと広い世界へ出て行ってごらん。その能力があれば絶対成功するよ」 それは、虚しさにもがく只石さんの心に深く届いた。人目を憚からずに泣いた。中3のときの先生の顔が浮かんだ。また言葉に背中を押してもらった。“挑戦してみよう”。只石さんはキーエンスを後にした。
7.他責にした無職時代。現実と向き合い、“聞く姿勢”で再起をかける。
しかし、思うようには進まなかった。 元エリート、元高年収・高学歴というプライドが邪魔をし、何をしても続かないため、無職となる。 「過去をひけらかして、傲慢で、感謝もせず、うまくいかないのは人のせい、社会のせいにして。それなのに口癖は“自分はこんなもんじゃない”。いつだってそんな態度だから友人も去っていきました」 誰もいなくなって生活に困窮して気づいた。みんな今日この瞬間を生きているのに、いつまでも過去に縛られている自分、これが現実なのだと。生活費を賄うために借金もあった只石さんは、もう逃げなかった。そこからは持ち前の実行力で行動に移していく。 まずやったことは就活で使った自己分析だった。著者杉村太郎氏にも会いに行った。 「杉村さんの絶対内定のおかげで希望する一流企業に入社できたこと。けれど結局退社して無職でいること。ここから脱却したいこと。だからこそ今また絶対内定を使って自己分析をしていることなどを話しました。そしたら、杉村さんにも、“それだけ頑張れるから絶対うまくいくから”と言われて。あまりに褒めてくださるので初めて転職ではなく起業を考えるようになりました」 起業を調べるうちにアフィリエイトで稼ぐ方法を知った只石さん。そのためにどうすればいいか考え、アフィリエイトの会社に直接聞きにいく。 「アフィリエイトの会社にも“直接聞きにくるなんて君が初めてだよ”と言われました。でも、私にとって聞くことの重要性は中学時代に痛感していました。高崎高校に合格できたのは叔父さんに勉強の仕方を教わったから。キーエンスに受かったのはOB訪問で72人の先輩が教えてくれたから。ひとりでは絶対辿り着けなかったと思います。逆にキーエンス時代は誰にも聞かなかった。聞くと聞かないでこんなに大きな差になることを痛感したんです」