苦悩・失敗・挫折を乗り越え、立ち上げ4年で74億円の売上を出した社長 「だれかの言葉で人は変われる」VALX誕生までの10のターニングポイント
9.全社員から辞表。おごりから目を覚まし、社員を信じて任せるとまさかの最高売上に。
その後、サイバーエージェントのバックアップもあり、こだわり社長ブログは、芸能人を押さえて1位に輝く。その実績をもとにブログコンサルを始めるのだ。 有名人となったこだわり社長のブログコンサルは大ヒット。スタッフは増え、法人「レバレッジ」を設立する。しかし、ブログ執筆、集客、セミナー講師、勉強会、営業、コンサル…。すべてを只石さんひとりがやっていたため、超多忙。「すべて自分が稼いでいる」という傲慢な態度から、社員に対して叱責ばかりしていたという。 そして、因果応報。我慢の限界を超えた全社員10名から辞表を叩きつけられる。そこでようやく目が覚め、只石さんは一線から退くことを決意。すべての業務を社員に任せることにした。すると、意外にも売り上げは過去最高を叩き出すのだ。 「会社経営とは社員たちの可能性を信じてやることだと学びました。かつて中学時代の私のように、社長が先生のようになれば社員は圧倒的に力を出すのだと気づいたんです」
10.山本義徳先生のアドバイスとレバレッジの戦略を掛け合わせてプロテインをローンチ。
次に挑戦したのがパーソナルトレーナーと利用者のマッチングサイトだった。空手を始めた只石さんが実際にパーソナルトレーナーを利用しその良さを実感したことで、パーソナルジムに特化したメディアを立ち上げることにしたのだった。そしてトレーナー不足により、トレーナー育成スクールも立ち上げることになる。ひとつの事業を深掘りし、ニーズをすくい上げることでどんどん広がっていく。 いまや一大事業となったプロテイン「VALX」もそのひとつだ。 「プロテインはタンパク質なので、成分では差別化できないから監修者を特別な人にしなければならないと思いました。そこでパーソナルトレーナー400人に誰の監修だと買いたいと思うかアンケートをとったところ、90%以上が日本有数のレジェンドトレーナー山本義徳先生と回答したんです。山本先生からは“プロテインもいいが、まずはEAAという人間の体では生成できないアミノ酸9種類を売りだしたらどうか”とアドバイスをいただき、まずはそちらを先行。商品名をEAA9にして発売しました」 「これがバズったんです。その後発売したプロテインも96.4%という高いタンパク含有率や吸収が早いこと、コスパの良さ等が評価され今もロングセラー商品となっています」 これら商品販売の成功にはスペック以外に、緻密なブランディング戦略があった。 「アメブロ時代に得た“無機質な情報だけでは人はリピートしない”という気づきが原点にあります。新規オープンのお店のことを書くだけでは情報だけが抜かれてしまう。リピートして読んでもらうには共感が必要だと気づき、ブログはお店情報の前に自分の半生を描いたんです。それによってファンを獲得することができた経験がありました。だからVALXではブログの手法をユーチューブで再現しました。ユーチューブで山本先生が筋トレの話をしながら商品開発の裏話を語るなどして、商品の背景も含めて知ってもらいファンをつけていく。そうすることで、成分で選ぶのではなく、世界観で選ばれるブランドになると確信していました」 VALXの快進撃は今も続いている。 こうしてみると、只石社長の挑戦と成功の影には、失敗や挫折があることを知る。同時にターニングポイントには、自分を過信せず、何事も人に聞くという姿勢と、信じて応援してくれる誰かの言葉があった。 「あの先生の一言から、僕は変わった。だから今でも“誰かのたった一言で人生は変わる”と信じて生きています。今の若い子を見ていると、やる前からできないと決めつけたり、やろうとしないことがある。それを見るたびに腹立たしいというよりもったいなく見えるんですよ。人間はそもそもできるんだからやってみようぜ!って思いますね」 さらにこう続ける。 「僕はプロテイン屋ではなく、誰かの夢中を応援し、誰かの人生に寄り添うような存在でありたいと思っています。何度も言いますが、僕の根底にあるのは、中3のときの先生の一言。あの言葉が可能性を投げかけてくれたように、VALXに想いを託して、消費材でさえもだれかの人生を変えられると信じたい。それは社員に対しても同じで、その人のもつポテンシャルを本人も気づいていないところで開花させたいと思っています」
miho