【本屋は生きている】東京・機械書房 今はなき先輩の本屋から受け継いだバトン。末永く伝えていく言葉がある
各地のこだわりの書店を訪ねる連載「本屋は生きている」。今回は東京・水道橋の「機械書房」を訪ねました。ある書店との運命的な出会いを経て、その思いを受け継いだ店。詩やリトルプレスを中心に、選び抜いた蔵書の1冊1冊と末永く付き合っていこうと決めています。 【写真】ソフビ人形がお出迎え「機械書房」店内の様子
前回、本屋イトマイにお邪魔した際、水道橋の機械書房の店主・岸波龍さんが本屋を開くまでをつづった「本屋になるまえに」というリトルプレスを購入した。岸波さんの名前は百年の二度寝の河合南さんやハリ書房のハリーさんらから耳にしていたが、足を運ぶ機会がないままだった。いよいよ満を持して? 書店主で作家の岸波さんを訪ねようと思い、その前に読んでおこうと思ったのだ。しかし「読めば全部わかるから」と言われたらどうしよう……? 灼熱の太陽をものともせず、東京ドームシティで遊ぶ子どもたちを横目に、JR水道橋駅から歩くこと約5分。金毘羅坂という名前らしい急坂の一角にあるとのことだが、どこだろう? 右手に見える6階建てビルの、入居者一覧をしげしげと眺めてみる。法律関係の事務所名が並ぶ中、3階に「機械書房」の文字があった。 ドアをガチャリと押してビルの中に入ってみると、蛍光灯に照らされた共同廊下は、「ザ・昭和」といった空気に溢れていた。往年の名ドラマ「探偵物語」で松田優作が扮した探偵・工藤周作がひょっこり現れそうだ。そういえば工藤探偵事務所のロケ地は、すぐ近くの淡路町にあった病院ビルだったっけ……。 エレベーターなどないから、階段を昇りフロア奥の部屋番号「36」を目指す。ドアのモールガラスが、これまた昭和の風情だ。ノックして中に入ると、ゴジラTシャツを着た岸波龍さんが迎えてくれた。4坪の店内はまさに正方形で、あちこちにソフビがずらりと並んでいる。 「正方形の空間を棚で囲んで、ぐるりと一周できるイメージにしたくて。だから正方形で家賃も抑えめだったここを借りようと、15分で決めました」