アルバルク東京の迅速な搬送に見る「進化するBリーグの安全体制」【バスケ】
EAP機能の鍵は信頼と連携にあり
10月26日、アリーナ立川立飛(東京都)で行われた「りそなグループ B.LEAGUE 2024-25 B1リーグ戦」第5節、アルバルク東京(以降A東京)と対戦した佐賀バルーナーズのNo.55ジョシュ・ハレルソンが第4クォーターで負傷。後日、右足関節脱臼骨折と診断され、復帰まで4~5カ月を要すると発表された。自身はSNSで「1日でもはやくまたチームメイトたちと一緒にバスケがしたい」と発信しているが、少しでも早い復帰を願いたい。 今回は、その搬送シーンにフォーカスしたい。ホームチームであるA東京の運営スタッフが行った無駄のない搬送・受け渡しについては、B.LEAGUEのSCS推進チーム、実際に試合を運営するB.LEAGUE各クラブから、EAP(緊急時対応計画)の好例として注目されている。日頃の連携がないアウェーチームの選手だったこと、208cm・125kgというビッグマンに対して、速やかに対応し搬送できたからだ。
SCS推進チームについては、すでにご存知の方も少なくないだろう。2023年7月に立ち上げとなり、命を守る(Safety)、選手稼働の最大化(Condition)、パフォーマンスの向上(Strength)という理念を持ち、多分野のスペシャリスト、ブレインが協力する先進的かつ画期的な試みである。理念の中で特に重視するのは“命を守る”こと。それは選手のみが対象ではなく、ヒト・モノ・体制、安全かつ安心な体制を整えて、来場者の命も守る意味が含まれている。設立からの1年では、試合中に危急の事態が起こった際のEAPの策定、それを確認するためのEAPハドル(試合前に関係者が集まってEAPを確認する時間)を設けることを義務化。さらに盲点を解消し、スピードアップを図るため、EAPを指導するスポーツセーフティージャパンによるシミュレーション訓練など、様々な策を講じてきた。 選手、来場者の命を守るという点で、この1年間でレベルが底上げされたことは知っておきたい事実だ。それでは、それ以前はどうだったのか? A東京の運営責任者で、先日の搬送時も中心となった細谷茉生さん(運営企画室 運営・ファンエンゲージメントGrアシスタントマネージャー)は、「私はB.LEAGUE初年度からクラブにいます。当時は運営に手一杯で本来あるべきEAPの作成まで手が回りませんでした。それでも色々な事象が起こる中で物を揃えたり、運営の協力会社さんとどう対応すべきかなど、最低限の準備をしているくらいでした。ただ、今考えると、強く危機感を抱けてはいなかったと思います」と振り返る。またトレーナーである五十嵐清さんは「元々しっかり対処しようという文化があるクラブだったと思います。だから道具も備えていましたし、何かが起こった時の話し合いも行っていました。ただ、指示の系統など、不十分なところもあったと感じます」と顧みる。