アルバルク東京の迅速な搬送に見る「進化するBリーグの安全体制」【バスケ】
独自に必要なツールを揃え、チームスタッフ、運営スタッフが志願してEAP講習を受けるなど意識が高かったA東京だが、SCS推進チームによる取り組みが進む過程で「ヒト・モノ・体制」のレベルは、さらに引き上がった。しかし、EAPは単なる計画であり、うまく実行されなくては無用の長物となってしまう。それを避けるためのシミュレーションも必要ではあるが、何より「価値観や意識の水準を合わせること」が重要と2人は主張している。試合では選手やチームスタッフの活躍が目立つが、会場を設営し、来場者を迎え入れ、撤収まで行う運営スタッフの存在がなければ興行は成り立たない。勝って喜んでもらうことを目指す前者と試合をより良く運営することを目指す後者、立場が変われば、考え方や優先順位も変わる。EAPに定めたことではあるが、実際には高いストレスがかかる中で正しく実行しなければならない。だからこそ、関わる人間の関係構築は大切なのだ。 A東京の場合、運営スタッフがいるオフィスとチームがいる体育館は離れており、日常的に一緒にはいられない。それでも、細谷さんは2年目にチームに帯同する仕事に就いた経験もあって、チームといい関係性を築くことができた。以来、五十嵐さんをはじめとするスタッフと常にコミュニケーションを図る関係にあると言う。 EAPを作り上げる過程でも「五十嵐さんを始め、チームスタッフの方にも常に共有し、確認してもらって進めています」と細谷さんは説明している。互いに“信頼しているし、何でも相談できるし、話もできる”という距離感を築けているからこそ、より良いEAPも作りやすくなるし、速やかに対処もできるというわけだ。五十嵐さんが「立場は違いますが、共に選手、来場者の安全を確保しながら興行を成功させることを目指しているわけです。そう考えれば、コミュニケーションは必然的に生まれると思います。まずは自分から話すということは大切だと考えています」と言うように、同じ方向を向いているからこそ関係性は深まるのだろう。