「ポジティブなエネルギーを出せば結果はついてくる」 過去2度の最終予選初戦黒星を知る遠藤航のタスク
「3度目の正直」か。それとも「2度あることは3度ある」なのか。 FIFAワールドカップロシア2018アジア最終予選初戦ではアラブ首長国連邦、FIFAワールドカップカタール2022アジア最終予選初戦ではオマーンと、連続で黒星を喫している日本代表。5日に、FIFAワールドカップ26への重要な一歩となるアジア最終予選となる中国代表戦を迎えるが、「ワールドカップ優勝」という大目標を掲げる主将の遠藤航には、“鬼門”攻略へ、強い日本のリーダーとしてピッチ上で躍動してもらう必要がある。 「前回大会の最終予選の結果はもちろん覚えていますし、アジアカップの悔しさも含めて簡単ではないということは身に染みてわかっています。とにかく一戦必勝というか、中国戦で最大限、力を発揮することが大事だと思います。『前回がどうだ』とかネガティブなことを意識しすぎずに、ポジティブにいい準備をしているので、そのエネルギーをシンプルに出していけば、自ずと結果はついてくると思います」と本人も前日会見で強調。気負い過ぎることなく、自然体で試合に入る構えだ。 今回の日本は三笘薫と伊東純也の看板両ウイングが復帰。揃って先発するかどうかは不透明だが、攻撃の推進力や局面打開力は確実に上がると言っていい。 その反面、冨安健洋、伊藤洋輝の両DFが負傷による不在。加えて左サイドバックの人材難が不安視される。間もなく38歳になる大ベテランの長友佑都、8月に6年ぶりのJリーグ復帰を果たした中山雄太がいるものの、2人とも状態が不安視される部分がある。町田浩樹を左SBに据える手もあるが、場合によってはスタートから3バックで行くことも考えられる。 自チームの流動的状況に加え、中国代表の指揮を執るのは“日本キラー”のブランコ・イヴァンコヴィッチ監督。FIFAワールドカップフランス98でクロアチア代表コーチを務め、FIFAワールドカップドイツ2006アジア最終予選で日本に土をつけたイランを率い、前回のオマーン代表監督も務めている因縁の人物だ。前日会見でも中田英寿、中山雅史、中村俊輔といった日本の代表的プレーヤーの名前をスラスラと列挙しており、今の森保ジャパンも丸裸にしているに違いない。 まさに難敵以外の何物でもないが、そういった時こそキャプテンの統率力が必要不可欠になってくる。遠藤は8強止まりに終わったAFCアジアカップカタール2023でも思い知ったはず。「熱量が足りない」という冨安の指摘を教訓にして、今回は自らチームを鼓舞していくべきだ。 幸いにして、過去に8年間日本代表の主将を務めた長谷部誠がコーチとして新たに参加。アジアカップにいなかった長友佑都も力強い援軍になってくれる。遠藤は遠藤なりに肩の力を抜いて、リーダー、ボランチとしてのタスクを遂行すればいい。 気がかりな点があるとすれば、リヴァプールで出場機会を失っていることだ。ユルゲン・クロップ前監督が去り、新たに就任したアルネ・スロット監督はオランダ代表MFライアン・フラーフェンベルフを重用しており、遠藤は8月25日のブレントフォード戦の後半アディショナルタイムの数分間だけピッチに立ったのみになっている。 彼には2019年夏にシント・トロイデンからシュトゥットガルトに赴いた当初も公式戦から遠ざかった経験がある。その当時も代表に来るたびに「試合勘は大丈夫か?」とメディアに聞かれていたが、自分なりの対処法は持っていると見ていい。 ただ、同じリヴァプールでコンスタントにプレーできない状態で前回最終予選を戦った南野拓実は「僕の場合はボールを受けた時、後ろに相手と味方がいるかを感じられるかどうかという観点で言うと、試合を重ねているときの方が冴えていると感じます。あとはゴール前のところとか、より感覚でプレーする局面で試合に出ている時の方がスムーズに体が動くというのはありますね」と発言。百戦錬磨の遠藤でも、感覚的なマイナス面はあるかもしれない。 ボール奪取力やデュエルの強さといったストロングが削がれてしまったら、日本代表のバランスも崩れてしまいかねない。そうならないように最善を尽くし、中盤を安定化させ、相手に圧力をかけていくことが、今の遠藤に課された最重要タスクだ。 「厳しい戦いになるのは選手も分かっていますけど、自分たちにも力があるという自信をしっかり持って、楽しみながら、勝利をつかみ取れればいい」と本人の口からも「楽しむ」というワードが飛び出した。そういうマインドを持ち続けていれば、必ずやいい仕事ができるはずだ。 今こそ、日本のキャプテンの底力を遺憾なく発揮してほしい。 取材・文=元川悦子
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