なでしこジャパンの新監督候補とは? 池田太監督が退任、求められる高いハードル
10月の国際親善試合に間に合う? 有力候補は…
新監督選任にあたって立ちはだかるもう一つの壁が、時期的な制限だ。 次のなでしこジャパンの活動は、10月26日に国立競技場で行われる国際親善試合。その試合が新体制の初陣となるはずで、それまでに新監督の選任を間に合わせることが理想だ。しかし、2カ月しかない上に、ヨーロッパはすでにシーズンが始まっている。もちろん妥協はできず、間に合わない場合は10月の試合は暫定監督で臨むことも考えられるという。 「アメリカのリーグはタイミング(がずれていてチャンス)はあるかもしません。そういう要因も含めて(候補を)精査します。来年2月にアメリカで行われる大会では監督がいない、というわけにはいかないでしょうから、その(時期までに契約がなく、空いている監督の)枠の中でしか選べないかな、というところはあります」(佐々木氏) 国内にもU-20女子代表の狩野倫久監督をはじめ、有力な候補はいる。一方で、外国人指導者を考えるならば、佐々木氏が言うように、11月末でシーズンを終えるNWSL(米女子プロサッカーリーグ)から招聘するアイデアが現実的だろう。 NWSL方面で可能性がある人物としては、元選手で、欧米のクラブや代表レベルで指導経験豊富なローラ・ハービー氏(イングランド)や、ケイシー・ストーニー氏(同)が挙げられる。 もう一つの可能性としては、ポゼッションやポジショニングの落とし込みに長けたスペイン人指導者から最適な人物を選ぶことだ。技術と戦術面で世界をリードするスペインは、その両面で指導者の総合的なレベルが高く、日本が理想とするスタイルを考えた時に合致しやすいのではないだろうか。 WEリーグのINAC神戸は、昨季からスペイン人のジョルディ・フェロン監督が率いており、千葉も同じくスペイン人のイスマエル・オルトゥーニョ・カスティージョ氏が今季ヘッドコーチから監督に昇格した。両クラブとも語学やコミュニケーションの壁は突破できる前例を示している。WEリーグがラ・リーガとパートナーシップ協定を提携していることも追い風になりそうだ。ただし、代表とクラブのマネジメントは大きく異なる。「カテゴリー問わず代表を率いた経験がある」という理想も満たせる人物は多くないだろう。 譲れない理想とさまざまな制約の中で、条件に合致する監督は現れるだろうか。なでしこジャパンが世界で再び栄光を取り戻すのか、それとも他国に差をつけられるのか――。新監督の招聘は、日本女子サッカーの未来を占う非常に重要な局面となる。 <了>
文=松原渓[REAL SPORTS編集部]
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