ショスタコーヴィチの名を世界に広めるきっかけとなった『交響曲第5番』【クラシック今日は何の日?】
クラシックソムリエが語る「名曲物語365」
難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。
ショスタコーヴィチ『交響曲第5番』 ソ連体制下での危機から作曲者を救った名曲
今日8月9日は、ドミトリー・ショスタコーヴィチ(1906~75)の命日です。 20世紀を代表する大作曲家ショスタコーヴィチは、全部で15の交響曲を残しています。中でも、最も人気が高く、頻繁に演奏される『交響曲第5番』は、スターリン体制下のソ連において、窮地に陥ったショスタコーヴィチを救った名作です。 オペラ『ムツェンスク郡のマクベス夫人』などが体制の意向に外れた作品であると批判されたショスタコーヴィチは、この批判を素直に受け止め、古典へ回帰した作品を生み出すことに全力を注いだのです。その結果生まれた作品『交響曲第5番』は絶賛され、ショスタコーヴィチの危機を救うとともに、その名を全世界に広めるきっかけとなったのです。 そのショスタコーヴィチの趣味がサッカー観戦であったことは有名です。危機的な状況にあった『交響曲第5番』作曲中にもサッカー場に足を運び、贔屓のチームを応援していたというのですから筋金入りです。 この世を去る直前にもTVでサッカー観戦をしていたと伝えられるショスタコーヴィチにとっては、サッカーこそが自由の象徴だったのでしょう。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。
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