ホンダ社長が語る「2040年脱エンジン」の行程表、「ならでは」の魅力的なBEVを実現できるか
そしてBEV普及期の2020年代後半以降は、いよいよGSユアサとの共同開発バッテリーの自前生産が始まる。正極材、セパレーターも合弁工場で生産。究極的には原材料の調達から完成車生産、バッテリーの2次利用、リサイクルまで含む、まさしく垂直統合型のバリューチェーンを築くことを目指す。 ホンダも、いよいよ自前でバッテリー生産まで手掛けるわけだ。かつてEVシフトは、水平分業を加速させると言われていた。しかしながら世界的に状況は変わってきたようである。
「モーター、バッテリーなど、コア部品に関しては競争領域なので、自分たちでやります。差の出ないものは買ってきてもいいんですが、これらはわれわれの“勝ち技”になることですから」(三部) バッテリーは単に電気を貯めておく、内燃エンジン車に於ける燃料タンクのような存在ではない。サイズ、形状が重要になるし、高出力を安定して供給し続け、しかも耐久性、信頼性に優れたものでなければならない。電気モーターとともに、要するに内燃エンジン車に於けるエンジンの一部でもあると考えれば、既製品を買ってくるという選択がホンダにとってありえないという結論に至ったのだろう。
そして3つ目の方策が「生産技術・工場の進化」である。 ギガキャスト、メガキャストなどと呼ばれる、要するに6000トンクラスの高圧ダイキャストマシンが導入される。まずはオハイオに作られるバッテリー工場の薄型バッテリーパックの製造ラインに導入され、これにより60以上にもなる構成部品、付帯部品の数を5部品にまで削減するという。 さらに日本の栃木にある研究所にも、やはりメガキャストマシンが導入されて、現在は量産性の検証が行われている。将来的にはボディ骨格部品への適用拡大も検討しているということだ。
その他に複数のモデル、商品の進化に柔軟に対応できるフレックスセル生産システム、生産能力最適化に繋がるデジタルツインの導入などが、カナダのバッテリー工場にまず導入される。一方、当面は内燃エンジン車の混流生産が行われ、EV専用工場へとスムーズな移行を図っていくという。 この「生産技術・工場の進化」は、何よりコスト低減に大きく貢献する。バッテリーコストは2020年代後半にはマイナス20%、生産コストは専用工場でマイナス35%を実現するという。ROS 5%という強気の目標設定には、こうした裏付けがあるわけだ。