ホンダ社長が語る「2040年脱エンジン」の行程表、「ならでは」の魅力的なBEVを実現できるか
例えば、新型アコードに投入されたシャシーの総合制御技術であるモーションマネージメントシステムなどは、次世代BEVにも進化した形で搭載される。走りの味は、そうやって継承、進化していくというわけだ。 ただし、操って楽しいというだけが、特に将来に向けたクルマの価値というわけではない。空間価値やデジタルUX、そしてAD/ADAS(自動運転・運転支援)などの知能化という部分も、今回改めて強調されていた。 「自動運転は思った以上に早く来ると私は言ってるんです。技術がだいぶ変わってきていて、その昔は、大量のデータと高精度マップをベースに、センサー、レーダー、カメラなど50個近くの機材を積んでの力ずくでやっていたわけです。コンピューティングパワーなんかはもう5kWぐらいの消費電力で。ところが今、極端に言えばそれらはカメラだけで、あとは人間の脳に近い能力を持ったコンピュータがその目で見て、地図がなくても走っていくという技術が急速に進化していて。クルマの価値のゲームチェンジが起こると考えています」(三部)
自動運転化が進めばパーソナルカーに於いては、まさに空間価値がクローズアップされてくる。要するに、運転しない車内で何をするのかという話だ。ヴィークルOSの自社開発は、そこに繋がってくる。 「空間価値が必ず商売になります。(先日発表された)IBMとの次世代半導体、ソフトウェアの共同研究も、そこを見据えたものです」(三部) 2年前に三部社長が将来のBEVは「空間価値」が重要だと話した際には、その中身はこれから考えるという状況だった。CESで青山副社長にうかがった際にも、独自の価値を持つのは簡単なことではないという答えだったが、改めて空間価値を追求するというこの発言である。ホンダとして、その目指すところが明確になりつつあるのかもしれない。
■垂直統合型のバリューチェーンを構築 3つの方策のうちの2つ目が「バッテリーを中心としたBEVの包括的バリューチェーンの構築」である。その3週前に発表された、カナダでの新工場の建設はそのモデルケースとなるものだ。 特に重要なのはバッテリーである。ホンダがBEV黎明期とする2020年代前半は、地域ごとの外部パートナーシップを強化して、コストを抑えながら必要なバッテリー量を安定的に調達する。BEV移行期の2020年代中盤からは、LGエナジーソリューションとの合弁によるバッテリー工場が稼働を開始する。また充電サービス、エネルギーサービス、リユース・リサイクルまで事業領域を拡大していく。