“大谷かぶと”脚光の甲冑メーカー、「効果すごいでしょって言われるけど…」手放しで喜べない事情とは
WS制覇大谷の活躍に刺激 「諦めることをしないのはすごく大事」
会社の知名度は向上したものの、事業の継続はこれからだ。「仕事は大変ですよ。やっぱり続けていくのが、ですね。モノ作っても、今はなかなか売れる時代とかでもないので。大量に作れるものでもないですし、売り上げが上がらないのであれば節約していかなきゃいけないっていうのもありますから。もう辞めたいなと思う時もあります」と苦笑い。地方における企業経営の難しさが口を突いた。 地元・薩摩川内の産業として発展していきたい思いは強い。 「大きな企業さんは地元にもいくつかあるんですけど、知名度は結構あるんじゃないかなと思っています。生まれ育ったところなので貢献していきたいです」 理想は地域の人材を採用し、一流の職人に育てていくことだ。まずは存在を知ってもらいたいと、将来を担う子どもたちに講演などを通じて仕事の魅力を伝えている。 「小学校、中学校、あとは専門学校ですね。今、学校関係に問い合わせさせていただいて、今回の大谷さん効果じゃないですけど、少しお話をいろいろさせていただいたりはしています。結構知らない方も多いんですよね。昔の古い鎧を持っていってお見せしたりとか、かぶってもらったりしています」 市内の小学校で行われた野球大会に“大谷かぶと”を持参したことも。「大谷さんが日本全国にグローブを贈られたじゃないですか。薩摩川内市の小学校で野球の大会があったんですよ。大谷さんからいただいたグローブを使って野球されてて、ホームラン打ったらかぶとをかぶろうって話になって、うちもかぶとを持っていかせてもらいました」。これには子どもたちも大喜びで、盛り上げにひと役買ったそうだ。 大谷は今季エンゼルスからドジャースに移籍。メジャー史上初の「50-50」(50本塁打・50盗塁)を達成し、念願のポストシーズン進出を果たした。さらにワールドシリーズを制している。 その姿を見て、田ノ上社長はまた刺激を受けている。 「大谷さんの日々の積み重ねが成果に出ていると思う。普通の人が客観的に見たら、できないことってできないじゃないですか。でも、それをやらないことには可能性は生まれない。努力することが結果となって実ることでもあるので、諦めることをしないっていうこともすごく大事だなっていうのは、大谷さんにも教えられていますね」と前を見つめた。
水沼一夫