アウディと上海汽車による中国に特化した新ブランド「AUDI」の成否を世界のメーカーが注視する理由
2025年半ばには早くも3台の量産モデルが登場する
2024年11月7日、ドイツプレミアムブランドとしておなじみの「Audi(以下、アウディ)」は、上海汽車集団(SAIC)との合弁で中国市場に特化したサブブランド「AUDI」の立ち上げを発表、併せてコンセプトモデル「AUDI Eコンセプトカー」を公開した。このモデルにインスパイアされた量産車が3モデル、2025年半ばから順次、中国市場に投入される予定だ。 【写真】AUDI Eコンセプトカーをもっと見る。豪華絢爛なインパネは一見の価値あり 中国市場で苦戦しているのは日本メーカーだけではない。欧州の伝統的なブランドも中国市場での販売台数激減、さらに市場特有の値引き合戦にも巻き込まれている。各社ともさまざまな方策を練っている最中だが、欧州勢のなかでいち早く手を打ったのがアウディだった。 すでに2024年5月20日には、かねてより関係の深かった中国大手の上海汽車(SAIC)と、中国市場向けのEVプラットフォーム基盤「Advanced Digitized Platform」の共同開発を発表し、2025年からプレミアムレンジに3モデルを投入する計画を明かしている。SAIC傘下のソフトウエア開発企業「零束科技(Z-ONE Technology)」も参加して、最新のスマート化技術が盛り込まれることもアナウンスされた。 このたび発表された新ブランドには、お馴染みのブランドシグネチャー=“フォーリングス”は付いていない。大文字アルファベットによる「AUDI」のブランドロゴに置き換えられている。これは姉妹ブランドであることを表現し、「AUDI」はあくまで中国に拠点を置き、中国ユーザー向けに仕立てられたブランドであることを意図しているという。 それにしても提携発表から、わずか半年で新ブランドを設立してコンセプトカーを発表、さらにその半年あまり先には実際に量産車を発売するというスピード感には恐れ入る。市場投入までの開発リードタイムを“30%以上短縮”したというから尋常ではない。 もちろん、かねて関係の深い両社ではあったので水面下では準備が進んでいたはずだが、ドイツ主導で進めていればこんな芸当は叶わなかったはずだ。正式なインフォメーションはないが、「Advanced Digitized Platform」は、SAICとアリババの合弁会社が設立したIMモーターズ(智己汽車)が採用するインテリジェントEVプラットフォームをベースに開発されたと考えられる。