汚染源がなかったはずの岡山と200キロ離れた工場周辺で特殊なPFASを検出! 「偶然とは考えづらい」汚染が拡散したのか
一方、ダイキン工業の淀川製作所近くのサンプルからは、問題の使用済み活性炭に含まれていたのと同じ、PFOAと4種類の「H-PFAS」が検出された。ほかに、PFOAの代替物質であるPFHpAやPFNA、PFDAも含まれていた。 活性炭と水(地下水)では吸着率が異なり単位も違うため単純に比べることはできないが、いずれも高濃度だった。 この「H-PFAS」は、経済産業省傘下の産業技術総合研究所が開発したPFAS一斉分析法の対象となる39物質に含まれておらず、米環境保護庁(EPA)が示す分析法でも対象になっていない。 これまで環境中でほとんど検出されたことのない「H-PFAS」が岡山・吉備中央町にあった使用済み活性炭と、200キロ離れた大阪・摂津ダイキン工場近くの地下水からそれぞれ検出され、その組成も一致したことになる。 ダイキン工業は取材に対し、汚染された地下水を汲み上げた後、活性炭を使って除去してきたことは認めているものの、満栄工業に活性炭の再生を委託した事実はないと、否定する回答を寄せている。 「弊社がPFOAの除去処理に使用した活性炭については、専門の処理業者を通じて焼却処理を依頼しており、弊社が確認する限り、使用済活性炭の再生を委託した事実はありません。吉備中央町での事案と弊社とを結びつけたり、関係性を匂わせたりするような取材・報道は、お控えください」 回答にある、「焼却処理を依頼した専門の処理業者」がどこなのか、ダイキン工業は明らかにしていない。
検出された希少なPFASに関する特許も
さらに、原田准教授は今回検出された「H-PFAS」についての研究論文を検索したところ、ダイキン工業が過去にいくつもの特許を出願していたことがわかった。 たとえば、7H-PFHpAについては、1994年に半導体のエッチング剤の用途で特許を出願している。 2012年には、H-PFASを水から除去する方法についての特許を出願していた。特許庁による「公開特許公報」によると、「発明の名称」は「ω―ハイドロパーフルオロアルキルカルボン酸の処理方法」とあり、内容はこう書かれている。 <ω―ハイドロパーフルオロアルキルカルボン酸が活性炭に吸着するということを見出した。そして、処理対象水からのω―ハイドロパーフルオロアルキルカルボン酸の除去に活性炭を用いることができ、それによって処理対象水からω―ハイドロパーフルオロアルキルカルボン酸を効率よく除去できることがわかった> ω―ハイドロパーフルオロアルキルカルボン酸とは、「H-PFAS」のうちカルボン酸を含んだもので、7H-PFHpAから10H-PFDAまでの4種類も該当するという。 ダイキン工業は1960年代後半からPFOAを製造・使用してきたものの、2000年代はじめに、PFOAには有害性と蓄積性があると指摘されたことを受け、前述した世界の大手化学メーカー8社による「2015年までに全廃する」協定に加わっている。 このため、ダイキン工業は2012年にはPFOAの製造・使用をやめた、としている。その年に、「H-PFAS の水からの除去法」の特許を出願していたことになる。PFOAだけでなく、化学構造が少しだけ異なる「H-PFAS」も使っていたことから、その排出を抑える必要に迫られていた、とも考えられる。 これについてダイキン工業は、以下のように回答した。 「ご指摘の特許を使用した製造、使用、販売については、個別の取引に関する事項に該当しますので、回答を控えさせていただきます。また、弊社の技術協力がなくともご指摘のωハイドロPFASは製造可能であり、仮定のご質問については、お答えいたしかねます」