斎藤佑樹 2年ぶり勝利の理由と成長への課題
斎藤佑樹が785日ぶりに挙げた勝利が感動の輪を広げている。7月31日、敵地で行われた千葉ロッテ戦に先発した斎藤は、6回を6安打1失点にまとめて、12年6月6日の広島戦以来、2年ぶりの白星を手にした。QVCマリンでのヒーローインタビューで「これから僕の第二の野球人生が始まります。皆さん、一緒に頑張っていきましょう」と場内に語った言葉がファンに共感を呼んだ。「頑張ります」ではなく「頑張っていきましょう」という丁寧な呼びかけが、斎藤と同じように人生において挫折や苦悩を味わっている人々の琴線に触れたようである。 斎藤は、なぜ復活を遂げることができたのか。この復活白星を本物と見ていいのか。斎藤は「真っ直ぐが指にかからなかった。ストレートが悪かった」という。そのストレートは130キロ台。ロッテ打線にそのストレートを痛打されると、斎藤は「変化球を低めに集めた。変化球が機能した」とボールゾーンをうまく使いながら手玉にとった。 風速6メートルのQVCマリン独特の風は、縦の変化と横の変化球、つまり、フォーク、スライダー、チェンジアップの3つの球種を大きく曲げているように見えた。「低めに変化球を集められた。ストレートは打ち返していたが、途中からストレートを使わなくなった。あせりからボール球に手を出した」とは、千葉ロッテの伊東監督の証言。キューバからの助っ人、デスパイネに対しては、外のスライダーかカットボールで併殺打をひとつ、残りの2つの三振は、すべて外角低めのボールゾーンへ変化する球だった。 日本ハムOBでもある評論家の与田剛氏に投球フォームの映像を細かく見てもらった。 「踏み出す方の左足が突っ張らずに、その左膝が曲がって体重が乗っていくような下半身の使い方に変わっていますね。以前は、速いボールを投げようと、フォームにタメを意識的に作り、ステップした左足を突っ張らせることによるテコの原理を使いすぎて、下半身がぐぐっと前へ移動できなかったのですが。今のフォームは、右の股関節から左の股関節へ体重がぐぐっと移動して、次に左足の膝に乗っていくことで、そこで時間を作れています」。