斎藤佑樹 2年ぶり勝利の理由と成長への課題
――そういう下半身の使い方は、どうプラスの影響があるのですか? 「そういう下半身の使い方ができると、ほんのわずかですが、リリースポイントも前に移動するんです。つまり、千葉ロッテの打線がボール球に手を出したということは、それが途中までストライクに見えたということ。この下半身の使い方によって、リリースポイントが前となって、変化球が打者から見て見極めにくくなったというわけです。元々、コントロールに苦しむタイプのピッチャーではありません。ただ、リリースポイントが早くてプロの打者からすれば、苦にせず対応できてきました。今の形でリリースポイントを前にしたピッチングができれば相手打線が『低めのボール球を捨てろ』と徹底されても、対応は難しくなると思いますよ」。 斎藤は、右肩を痛めて1年を棒に振ったが、今春のキャンプからは、新しいフォーム改造にずっと取り組んできた。その改造結果が、いわゆる球持ちのいいピッチングを生み出し、打者が見極めにくい変化球のキレにつながったのだ。 2年ぶりの白星を手にした斎藤は試合後、「気持ちで負けないようにした」と言った。それが、インサイドに厳しくストレートとシュートを使った配球である。与田氏も、「インサイドを使えれば、そこをバッターが意識するので、なおさら外や低めの変化球への対応が遅れる」と言う。フォーム改造にプラスして強いメンタル。かつて“ハンカチ王子”と呼ばれたエリート投手は、逞しくなって帰ってきた。 栗山監督は、「先発投手は余っている。今後、対戦相手との相性などを見ながら(先発で)使っていきたい」と今後の起用法を明らかにして、さっそく、翌日には、登録を抹消された。ローテーション候補として生き残ったわけだが、この勝利は、斎藤の本物の覚醒と考えていいのだろうか? 筆者は、斎藤自身が「生命線」と言うストレートのスピードに不満が残った。まるで心理学者のような配球術で、走者を背負いながらも失点は角中のソロアーチ1本に抑えたが、それで長続きするのか?との疑念も抱いた。