「在庫セール」でブランド価値をどんどん下げていた… 売り上げ100億でも利益ほぼなし、会社の構造を変えた兄弟の経営手法とは
信州に本社を構え、自社製のジャムやワインなどを、全国174店の直営・FC店舗で販売するブランド食品企業「サンクゼール」。かつては、100億円を売り上げながら、利益がほとんど残らず「借金だらけ」という状態だったが、健康不安の父から経営を引き継いだ40代の兄弟が会社を大きく飛躍させた。食品製造販売会社「サンクゼール」(長野県飯綱町)の再建について、久世良太社長(47)に聞いた。 【動画】専門家に聞く「事業承継はチャンスだ。」
◆父の健康不安、「底」の会社を引き継ぐ
----会社を継承したきっかけをお聞かせください。 父はペンションを経営しつつ、スキーのプレイヤーでもありました。 でも、若いころの古傷の痛みが60代後半に強くなり、首に人工の骨を入れる手術をし、仕事に集中できる状況ではなくなってしまいました。 肉体的にも精神的にもだいぶ辛かったと思います。 そんな中、専務や常務の立場で経営に携わっていた私と弟に事業を継承するなら、今のタイミングがベストではないかという話になりました。 当時、弟は海外事業の責任者としてアメリカ、私が国内事業を分担してみていました。 父から呼び出され、私が代表として事業を継承し、ナンバー2は弟。 相談しながら仲良くやっていってほしいと言われ、「私が必要であれば、社長として職責を果たそうと思います」と話しました。 当時、業績は徐々に回復していましたが、決して良い状態で引き継いだわけではありませんでした。
◆新商品のブランド価値がどんどん下がる悪循環
---社長に就任して、どのような課題に向き合いましたか。 大きな問題点が二つあり、直営店の立て直しが急務でした。 当時、売り上げを高めるため、新規店を年間20店舗くらい出していたのですが、一方で既存店の売り上げが15~20%減となり、顧客が離れていました。 何とかしようと新商品を投入しても、店舗とのコミュニケーションが悪く、店舗スタッフはお客さんに新商品をどう説明していいか分からず売れ残る。 残った新商品を在庫整理のためにセールすると、ますますブランド価値が落ち、売り上げが低迷してしまう悪循環に陥っていました。 このため、リピート率が落ちていた主力商品の商品力を高めるため、新規出店を凍結して既存店の回復に注力しました。