「在庫セール」でブランド価値をどんどん下げていた… 売り上げ100億でも利益ほぼなし、会社の構造を変えた兄弟の経営手法とは
◆株式はオーナー家以外も保有、そして国際化へ
----IPO(新規公開株式)を選択した理由をお聞かせください。 会社にとって一番何がハッピーなのかを考えたとき、私達の時代だけではなくて、次の世代にも経営が引き継がれていくことが大事だと考えました。 このため、2022年12月21日に東京証券取引所グロース市場に上場しました。 私は事業が継続して成長できる企業は、地域の宝だと思っているんです。 地域に雇用を生み、人が増えるから生産量も増えるという好循環を作り出すことができるからです。 今後もサンクゼールがそういった企業であり続けるためには、株主がオーナー家だけでは、非常にリスクがあります。 IPOによって株式が公開して経営の民主化をすることで、みんなで経営の責任を担って健全な企業運営をしたほうが良いのではないかと。 そうすることで優秀な人材が集まり、さらなる成長が期待できると考えました。 ※オーナー家で株式の30%超えは保有 ---今後のビジョンについてお聞かせください。 社長に就任したとき、株主総会で従業員に社長交代のメッセージを送ったのですが、「偉大な創業者の先代から選ばれましたが、名実ともに従業員から認められる社長になります」と話をして、私の経営方針を伝えさせてもらいました。 退路を断って経営に専念する覚悟でした。 この覚悟は従業員に伝わっていたようで、後に「あのメッセージはすごく心に残っています。宣言したことをやり遂げましたね」と言われて、すごく嬉しかったです。 今後も会社が成長していくためには、国際展開は避けて通れない道です。 そのために新しい販路に、しっかり投資をしていかなくてはいけません。 現状アメリカや台湾では、現地の小売店や問屋さんとも関係ができており、ほかの国への進出の話も進んでいます。 将来的にはヨーロッパにも進出して、日本の素晴らしい食文化や食材を世界中の人に伝えていきたいです。
■プロフィール
株式会社 サンクゼール 代表取締役社長 久世 良太 氏 1977年、長野県生まれ。電気通信大学大学院電子工学専攻修了後、2002年セイコーエプソン入社。研究開発部門で3年間勤務し、2005年にサンクゼール入社。2008年取締役に就任し、2009年信州大学経営大学院イノベーション・マネジメント専攻(MBA)修了。2012年サンクゼール代表取締役専務、2018年代表取締役社長就任。「サンクゼール」のほか、和食セレクトショップ「久世福商店」、「THE GROCERY&WINE」の3ブランドで店舗展開を行っている。