岸田前首相に挑んだ維新公認の35歳元大阪市議 無謀といわれた12日間に密着リポート
政令市議の職を辞し、地元に戻って巨大与党を率いた前首相に挑んだ。結果は遠く及ばず。それでも、政治改革の総決算としての選挙にすべきだと、全国有数の「無風区」に新たな選択肢を示したとの自負はある。10月27日投開票の衆院選で、広島1区から日本維新の会公認で立候補した元大阪市議、山田肇氏(35)。世代的には異例だがネットも使わず、わずかな仲間と「自分らしい選挙」で12日間を駆け抜けた。 【写真】「もっと下に…下に」“半ケツ”状態でビラ配りをするボランティア女性 選挙戦終盤の10月23日、応援に駆け付けた維新の馬場伸幸代表がこんなエピソードを披露した。 「山田さんはふるさとに帰り(前首相の)岸田(文雄)さんの胸を借りて政治改革をしたい、と。私も(維新共同代表で大阪府知事の)吉村(洋文)さんも『無謀だからやめた方がいい』『絶対無理』と何度も説得したんです。でも、山田さんは頑として聞かない」 隣に立つ山田氏は少し笑って恐縮ぎみに頭を下げた。マイクを片手に馬場氏は続ける。「厚い壁かもしれないが、何度でもぶつかっていきたい、と。そういう頑固さも政治に必要です。今はあっちこっちと揺れ動く政治家が多すぎますから」 演説後、記者団の取材に応じた馬場氏は市議の身分に固執せず挑戦する山田氏の姿勢を問われ、「まさに維新スピリットだ」と述べた。 ■握手すらしてもらえず… 関係者によれば今夏、山田氏が大阪市内で吉村氏らと会食した際、市議の任期中での国政挑戦に難色を示された。定数81の大阪市議会では、維新の母体・地域政党「大阪維新の会」が過半数を占めるが、「地方議員600人以上」の目標を達成した昨年4月の統一地方選時の勢いに陰りが見えていた。会派離脱者が相次げば、自公との対立から議会の空転も懸念された。 だが、山田氏の思いは揺るがなかった。統一地方選の告示期間中に母親が67歳で死去。実家で独居の父親(72)の存在が気がかりでもあった。 「現役世代の負担を軽減し、より持続可能な社会になるよう新しい選択肢として訴えていく」。9月27日、2期目で市議を辞職。同30日に広島県庁で立候補を表明した。 選挙区は出身の広島市東区などを含む広島1区だが、政治家としてはほぼ無名。公示当日の10月15日、第一声に臨んだJR広島駅北口には報道陣の姿が目立ち、バス待ちの有権者に握手を求めても避けられるほどだった。