岸田前首相に挑んだ維新公認の35歳元大阪市議 無謀といわれた12日間に密着リポート
一方でうれしいふれ合いも。街頭で声を掛けられた高齢女性からの一言が忘れられない。「堂々と、立派にやったらええんよ」。選挙でがなり立てるのはポリシーでなく、声量を抑えて訴えていた。女性の真意こそ分からないが、前首相のおひざ元でも「遠慮せず、言うべきことを言え」との激励だと受け取った。
■1イニングでも見せ場
今回は選挙戦に入る前も突入した後も「岸田氏が盤石」との見方は変わらなかった。いわば「ワールドシリーズMVPと高校球児との戦い」(山田氏)。思い切って「自由度高め」(同)の選挙スタイルで臨んだ。電話や選挙はがきはおろか、ネットにも頼らない。
というのも、ネット選挙とは、交流サイト(SNS)などを駆使した自らの発信ではなく「いかにバズれる(注目を集める)ような話題を提供できるか」と考えるから。スイカ柄のヘルメットをかぶり、ミニバイクで選挙区を回った。
「バイクで500キロ以上は走ったと思う。バズる3歩手前で終わってしまったが」と自嘲っぽく笑う。
金をかけず、人を割かずとも戦える選挙を追求してみたいとの思いもあった。市議になる前から議員秘書として選挙にかかわり「業者の食い物になっている」と感じていた。「挑戦的な選挙スタイルも政治改革の主張に通底している」という。
スタッフは計6人で、常にその人数が付いて回っていたわけではない。「スコア的には大差負けだが、限られた人的資源と資金で1イニングぐらいは見せ場を作れたのではないか。今はすがすがしい気持ち」と振り返った。
今後の身の振り方はまだ決めておらず「選挙に落ちたらただの人」を実感している。自身の生活などもあり、再び国政に挑戦するとは軽々しく言えないが、たぎる思いには逆らえない、とも思っている。(矢田幸己)