100億円マッチも夢ではない?!井上尚弥の日本ボクシング界初となる12・14防衛戦のPPV配信は成功するのか
全米でPPVで中継されるのはスターボクサーや厳選したカードのみ。それでも10万件で終わるようなものも少なくなく、3960円という設定金額で、井上の相手が無名であることを考えると100万は夢の数字。もちろん、大橋会長も十分に事情は理解していて、盛り上げようと発言したものだが、井上の知名度と求心力でどれだけの視聴件数が集まるかは注目だろう。 まだPVVが浸透していない現状を考慮すれば、売り上げ1億円、つまり3万件の視聴契約件数があれば最初のトライとしては成功だと思う。 我々メディアはついつい数字に走りがちだが、このチャレンジには大きな意味がある。NTTぷららの永田社長が、「ボクシングビジネスの向上、収益性の向上をはかっていくことにつながる」とコメントしたが、これまでは、地上波中継とチケッティングが主な収入だった日本のボクシングの興行スタイルに一石を投じることになった。新型コロナ禍では、世界中の興行が、一時的にストップしたが、この形で収益が出れば、最悪の事態も回避できる。 また地上波では大晦日開催クラスのビッグファイトでも放映権料は、1億円が限界。だが、PPVでは収益の可能性は、それこそ無限大で、全米なみに100億円クラスの夢のある金額を手にすることも可能になる。 12月29日にさいたまスーパーアリーナで開催されるWBA世界ミドル級スーパー王者の村田諒太(35、帝拳)とIBF世界同級王者、ゲンナジー・ゴロフキン(39、カザフスタン)のビッグファイトも地上波ではなくAmazonプライムビデオでの配信となった。こちらはPPVではなくサブスク契約で視聴できるが、井上、村田という世界的なスターの存在を契機に日本の従来型のビジネススタイルが転換期を迎えていることは確かだろう。井上自身も、「PPVはアメリカでは主流。日本では初めてで馴染みのないものだと思うが、時代も変わってボクシングを見るのはPPVという流れになっていくと思う。一発目を成功させたい。その思いで臨みたい」と、記念すべきPPV第1弾のリングに立つ使命感を口にした。 またエンターテインメントとしての演出にも工夫が施される。ラウンド間には、4D技術を使った立体的なスロー映像が流され、技術の細部と迫力を伝え、会場のカラーを真っ白に統一し、来場者にも白のドレスコードを求め「ホワイトパーティー」と称した演出がなされる。その真っ白の花道から登場する井上は赤のガウンを用意しており、約2年ぶりとなる日本の日の丸のイメージが浮かび上がる。その演出にも加わった井上は、「2年ぶりの日本開催。特別感があってもいいのかな」と言う。 またゲスト解説には、人気YouTuberのHIKAKINが起用され、これまでボクシングに関心のなかった視聴者層を誘導しようという試みもある。