「垂れているのが水なのか経血なのか」「いずれ無月経に…」パラ競泳選手・石浦智美が語る視覚障害と生理
「視覚的に生理用品の在庫を確認することができない」
――月経カップを使ってから、どのように生活が変わりましたか? 石浦 生理中でも安心してプールに入れるようになったことはもちろんですが、特に大きかったのは、生理用品の買い物が不要になったことですね。 これまでは、ドラッグストアで生理用品を買いたい時、自分が欲しいナプキンやタンポンがどこに置いてあるかわからないので、必ず店員さんにお願いして売り場まで案内してもらい、商品を探していただく必要がありました。特に男性の店員さんだと、どの商品を欲しいのか伝えるのに気を遣うこともあって……。 また、みなさんも家にある生理用品が少なくなっていることに気づいて、買い物に行くことがあると思いますが、私の場合、視覚的に生理用品の在庫を確認することができません。そのため、ナプキンやタンポンがあと何個残っているかを、常に頭の中で把握しておかなくてはいけなくて、その管理が意外と大変なんです。 ――そんな困りごとがあったとは、思いもよりませんでした。 石浦 そうしたストレスから完全に解放されたのは大きかったです。遠征の時の荷物も減りましたし、ナプキン特有のモコモコとした不快感や、夏の蒸れからも解放されました。これだけでも、月経カップに変えてよかったと心から思います。 ――ほかにも、月経カップを使ってみて良かったことはありますか? 石浦 はい。カップに溜まった経血を指で触れることで、自分の経血量を初めて知ることができました。さらに、私が使っているカップには凹凸のある目盛りがついているので、正確な量を確認することができます。タンポンやナプキンでは、なんとなくの感覚でしか経血量をイメージできていなかったのですが、生理が終わったかどうかも正確に判断できるようになりました。 ――想像していた以上に、良いことづくめだったんですね。 神林 一度、石浦さんから「カップを紛失してしまいました!」とご連絡をいただいて、慌てて新しいものを送ったこともありましたよね。 石浦 ありましたね。あの時は海外遠征の準備をしていて、荷物に入れようとしたら、見当たらなくて焦りました。おそらく、洗って干している間にどこかに紛れてしまったのだと思います。それ以来、練習用バッグに入れて、常に持ち歩くようにしています。 ――それくらい、なくてはならない存在だということですね。 石浦智美(いしうら・ともみ) 新潟県上越市出身。生まれつき、緑内障と無光彩症があり、将来的には見えなくなるだろうと診断される。医師のすすめで2歳ごろから水泳をはじめ、高校3年生で初めて国際大会へ出場。東京パラリンピック、パリパラリンピックに2大会連続で出場し、東京では50m自由形で7位、パリでは混合400mリレーで6位、100m自由形で8入賞を果たした。伊藤忠丸紅鉄鋼株式会社所属。 神林美帆(かんばやし・みほ) インテグロ代表取締役。約8年間、国内大手航空会社で国際線キャビンアテンダントとして勤務。その後、カナダへ留学し、帰国後は米国口腔ケア商品の日本市場立ち上げに従事。青山学院大学大学院国際マネジメント研究科(MBA)修了。2016年、月経カップと出会い、その快適さと安心感に感銘を受け、2018年にインテグロ株式会社の代表に就任。著書に『私たちの月経カップ:より快適な新しい時代の生理用品』(現代書林)がある。 木下綾乃(きのした・あやの) 生理ケア&月経カップアドバイザー。筑波大学 体育専門学群 卒業、中高保健体育教員免許取得。筑波大学 人間総合科学研究科 体育学専攻 博士前期課程 修了。3歳から水泳を始め、約18年間にわたり競泳選手として活躍。月経カップを使い始めてから、生理中の過ごし方や生理への意識が大きく変化。これまでの経験を活かし、月経カップの選び方や使い方、生理ケアに関する情報をワークショップやSNSなどで発信している。
河西みのり