「垂れているのが水なのか経血なのか」「いずれ無月経に…」パラ競泳選手・石浦智美が語る視覚障害と生理
足を伝うのが水なのか経血なのかわからない
――ここから今回のテーマに入っていくのですが、初潮を迎えた頃にはすでに水泳を始められていたんですよね。 石浦 はい、初めて生理になったのは中学2年生の時でした。 通っていた盲学校には女性の生殖器の模型があって、それを触りながらここは膣で、ここが子宮、と確認しながら、タンポンの使い方を教わりました。 ――健常者でも生理中の水泳は困ることが多いですが、ほぼ毎日水の中で練習をされる石浦さんには、どんなお悩みや困りごとがありましたか? 石浦 水泳選手の多くがタンポンを使用しており、私もそうでしたが、長時間プールにいると紐を伝ってタンポンが水を吸収してしまうんです。プールに入っている間は水圧の影響で経血は出ませんが、プールから上がった瞬間、タンポンに吸収しきれなかった経血が漏れてしまうことがよくありました。 私の場合、水着から液体が垂れる感覚があっても、それが水なのか経血なのかを見て確認することができません。それがいつも不安でした。 ――大事な大会と生理が重なってしまった経験は? 石浦 もちろんあります。でもそれは、そんなに気にしていなかったかな。 生理と大会が重ならないでほしいと思うようになったのは、国際大会に出場するようになってからですね。 ――それは何かきっかけがあったんでしょうか? 石浦 やっぱり、生理になるといろいろ面倒じゃないですか(笑)。 遠征の時は荷物が増えますし、大人になるにつれて生理痛もだんだん辛くなってきて……。
「いずれは無月経に……」アスリート外来でピルをすすめられた
――ピルでコントロールしようと思ったことは? 石浦 周りにはピルを飲んでいる選手もいましたが、当時は「飲み続けるとがんになりやすい」「血栓ができやすくなる」などのネガティブな情報が多くて、使いたいとは思えなくて。 ピルを飲み始めたのは、2016年頃です。社会人になって、フルタイムで働きながら競技活動もしていたら、だんだん追い込まれて体調が悪くなってしまって……。その時、会社の産業医の先生から「アスリート外来」があることを教えてもらい、順天堂大学附属順天医院の女性アスリート外来を受診しました。そこで高プロラクチン血症と診断されて、初めて自分の体の状態を知ったんです。 ――高プロラクチン血症。それはどんな病気ですか? プロラクチンは「乳腺刺激ホルモン」と呼ばれる、出産後に多く分泌されるホルモンなのですが、出産や授乳をしていないのにプロラクチンの数値が高い状態を高プロラクチン血症というそうです。検査の結果、過度なストレスによってプロラクチンの数値がかなり高くなっていて、いずれは無月経になる可能性もあると言われました。その際、ピルをすすめられ、正しい情報も教えてもらえたことで、飲んでみようと思えたんです。 ――医師からちゃんとお話が聞けてよかったですね。 石浦 そうですね。それまでは婦人科に行く気にもなりませんでしたし……。会社の健康診断で婦人科検診を受けたことがなかったわけではないですが、どうしても抵抗がありました。見えない、ということでなかなか前向きになれない面はあったと思います。