「株価下落はむしろチャンス」 株価乱高下、新NISAビギナーに今できることとは
「むしろチャンス」
さらに、長期投資の趣旨を解さず“早く多く”と急(せ)いて資金をつぎ込んだ結果、生活費に困窮する「NISA貧乏」に陥る人も出始めているというのだ。ファイナンシャルプランナーの深野康彦氏が言う。 「昨年末の日経平均は3万3000円台でした。それが3月には4万円台に入り、初心者も含めて“乗り遅れるな”とばかり株を買い始めた。そうした人が、今回の急落で嘆いているのです」 続けて、 「新NISAのつみたて投資枠を利用している人は5年、10年後に結果が伴えばいいのだから何も問題はありません。高値づかみを避けるために毎月定額を積み立てているわけで、株価下落は、買付数が増えるのでむしろチャンスだといえます。一方、成長投資枠で個別銘柄を買っているような“攻めの投資”の人たちは慌てたかもしれません」(同) 一例として、人気の「NTT」株は1月23日に192.9円の高値をつけたものの、6月には140円台にまで下落。7月30日の終値は158.7円にとどまっている。 「今回の急落でいえば『ソフトバンクグループ』株も成長投資枠の利用者には打撃となったはずです。7月11日には一時1万2000円を超えていたのが、2週間後には9000円台に落ちてしまった。NTT株は半年で約25%下がりましたが、あっという間に同じくらい下落したことになる。ただしNISAはそもそも『長期・分散・積立』がポイントで、毎月、無理のない金額を投じ長い時間をかけて増やしていくもの。個別銘柄を買う人にとっても、この視点は不可欠です」(同)
「今回の下落は、ほんの入り口」
第一生命経済研究所首席エコノミストの永濱利廣氏も、こう話す。 「投資経験が乏しい人は、成長投資枠に一気につぎ込むのは避けるべきです。今回や4月の急落は、いい教訓になったことでしょう。初心者はやはり、毎月一定額をつみたて投資枠に使うのがよいと思います」 市場の指数への連動を目指して運用されるインデックスファンドで絶大な人気を誇るのが通称「オルカン」、三菱UFJアセットマネジメントが運用する「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」である。7月11日には基準価額2万7282円だったところ、こちらも同月下旬には2万5000円台まで下がっているのだが、 「購入単価を平準化することでリスク分散ができます。世界の市場に連動するようなインデックスファンドのポートフォリオでは、頻繁に銘柄入れ替えすることで成長している企業の構成比率が保たれるのです」(同) が、経済アナリストの森永卓郎氏は、 「世界経済はバブルの真っただ中にあると私は捉えています。今回の下落は、ほんの入り口に過ぎません」 と、警鐘を鳴らすのだ。 「株価とはじわじわ上がり、下がる時は急落するもの。今回の下落率は約11%ですが、たった1割下がってうろたえている人が、今後起こりうる大暴落に耐えられるでしょうか」(同) 要因は半月で10円と急速に進んだ円高だといい、 「これはまだ調整途上。購買力平価をみても、本来の均衡為替レートは1ドル90~110円です。110円に修正されていくのだとすれば、NISAで運用している米国資産を中心とした投資信託の価値も大きく下がる。オルカンといえど、3割の円高が来ればひとたまりもないでしょう」(同)