ホイールベアリング交換の必需品。パイロットベアリングプーラーの仕組みと使い方
ホイールやエンジン内などで軸を受ける部分に組み込まれているベアリングは、滑らかな回転に不可欠な部品です。エンジン内部のようにオイルで潤滑されるものや、ホイールベアリングのようにグリスで潤滑されるものがありますが、どちらのタイプも潤滑不良や異物の混入によって機能が損なわれた場合は交換しなくてはなりません。その際に使用する代表的な工具が「パイロットベアリングプーラー」です。 【画像】ベアリング交換の専用工具をギャラリーで見る(7枚) 文/Webikeプラス 栗田晃
圧入相手が「軸」か「ハウジング」かによって使用工具が異なる
回転する部品の荷重を受けつつ、軸をブレさせず滑らかに回転させるために使われているのがベアリングです。存在を意識するか否かは別として、バイクの部品の中で最もよく知られるベアリングといえばホイールベアリングでしょう。あるいは自分でエンジンまで分解組立するような方であれば、クランクシャフトやミッションシャフトとクランクケースの支持部に組み込まれているベアリングを思い浮かべるかもしれません。 バイクのベアリングは、受ける荷重の種類や求められる性能に応じてボールベアリングタイプの名称で知られる「玉軸受け」や、ニードルローラーベアリングやテーパーローラーベアリングなどの「ころ軸受」が使い分けられています。そしてそれらは、内輪か外輪のどちらか一方を圧入して使用しています。 ホイールベアリングの場合、ホイールハブのハウジングに対して、ベアリングの外輪を圧入します。内輪にアクスルシャフトが貫通しますが、両者は圧入でなはく手で抜き差しすることが可能です。 一方、ミッションシャフトの中には、シャフトにベアリングの内輪を圧入しているタイプがあります。ベアリングが圧入されたシャフトをクランクケースに組み付ける場合、ベアリングの外輪とクランクケースのハウジングは圧入ではありません。 圧入する相手が軸なのかハウジングなのかによって、ベアリングをセットする際に押す場所が異なるとともに、交換などでベアリングを取り外す際に必要な工具の種類も変わります。 ホイールベアリングを見ても分かりますが、ハウジングに圧入されたベアリングは外輪を外側から掴んで引き上げることができません。貫通したハウジングに圧入されたベアリングであれば、内輪を叩くことで反対側に抜くことが可能な場合もありますが、ハウジングが「行き止まり」だとこの手は使えません。 このような場面で活躍するのがパイロットベアリングプーラーです。