あいみょんも夢中!FRUITS ZIPPERの時代性と戦略 「かわいい」モードが復活、女性アイドル界のいま
その松田聖子には、「ぶりっ子」という形容もあった。「かわい子ぶりっ子」の短縮形である。同世代の少女や他の女性アイドルもこぞって真似をした「聖子ちゃんカット」の髪型の印象もあったが、話しかたや仕草など一挙一動に反応した世間がそれをネタにしたのが「ぶりっ子」というワードだった。 したがって、そこに込められているのは必ずしもポジティブな意味ではない。だが「かわいい」ことがアイドルの主たる武器であること、そのパワーを広く知らしめたのが松田聖子であることは間違いない。
それから時が過ぎ、2000年代以降くらいから、アイドルにおいても歌やダンスのスキルを求める流れがだんだん強くなった。「かわいい」ことに意味がなくなったわけではないが、やや影が薄くなっていったことは否めない。 そのなかで特別な輝きを見せたのが、「ももち」こと嗣永桃子だろう。 ハロー! プロジェクトに所属していた嗣永桃子は歌やダンスにも定評があり、Berryz工房、Buono! 、カントリー・ガールズなどのメンバーとして活躍した。そしてその一方で、2010年代にはソロでバラエティ番組に多数出演するようになり、「ももち」の愛称で親しまれた。
その一挙手一投足が、アイドルの「かわいさ」をあらゆるかたちでアピールするもの。「ももち結び」と名づけたツインテールとメンバーカラーでもあるピンクのフリフリの衣装。そしていつも立っている小指。それは「ファンからの愛を受信するためのアンテナ」だ。 一見、それはアイドルを戯画化してネタにしているともとれる。だがそうではなく、自らにとってのアイドルの理想を具現化したものだった。 そんなももちのポリシーを表したフレーズのひとつとして、「生まれ持った良さ」というものがある。言葉づかいや仕草をキャラではないかとツッコまれると、キャラではなく「生まれ持った良さ」だと返す。
演じているわけではない、ということである。松田聖子に投げかけられた「ぶりっ子」という呼びかたには演じていることを揶揄するニュアンスがあったが、それをももちは否定していた。そこには、嗣永桃子がアイドルのプロとして抱く固い信念がうかがえる。 ■世界を意識した「NEW KAWAII」へ そして令和の現在。「かわいい」はなぜ復活しているのか? FRUITS ZIPPERは、アソビシステムという芸能事務所が展開する「KAWAII LAB.」(カワイイラボ)というプロジェクトから生まれたアイドルである。