あいみょんも夢中!FRUITS ZIPPERの時代性と戦略 「かわいい」モードが復活、女性アイドル界のいま
「あたし今最上級に可愛いの! 君に振られて最上級に可愛いの! これが乙女の逆襲だ!」というこちらも印象的なサビから始まる曲は、やはりアップテンポで心地良い。 衣装もやはりメンバーカラーで色分けされたミニスカートで、手振りダンスと呼ばれる振り付け(元PASSPO☆の槙田紗子によるもの)も面白い。MVの再生回数も1100万回を超えている。 また高嶺のなでしこは、2024年にメジャーデビューした10人組。こちらは、「可愛くてごめん」という楽曲が先行したかたち。
クリエイターユニットのHoneyWorksの手によるもので、そのメディアミックスとしてアニメ『ヒロインたるもの! ~嫌われヒロインと内緒のお仕事~』のキャラクター・ちゅーたん(CV:早見沙織)が歌ったもの。高嶺のなでしこがそれをカバーし、2023年にリリースした。 「Chu! 可愛くてごめん 生まれてきちゃってごめん」などのサビのフレーズが象徴するように、「かわいい」ことをまったく照れることがないポジティブさが逆に爽快だ。
こちらもTikTokで話題となり、MVの再生回数は1950万回超。オリジナルのアニメキャラクター版に至っては、1.4億回という再生回数を誇る。 FRUITS ZIPPERと併せ、所属事務所も異なるこれら3組が歌う楽曲は、曲名もそうだがとにかく「かわいい」を強調する。 普段女性アイドルにそれほど関心のない人たちからすれば、ほとんど区別がつかないかもしれない。だが事実、そんな「かわいい」女性アイドルたちが、いまトレンドになりつつあるのだ。
■「かわいい」の系譜~松田聖子からももちへ 「かわいい」は、昭和の頃からアイドルを形容する常套句でもあった。FRUITS ZIPPERなどを見て、まるで昭和のアイドルがよみがえったかのような思いにとらわれたひともいるはずだ。 そんな“かわいいアイドル”の元祖的存在として、松田聖子を外すわけにはいかない。 1980年デビューの松田聖子は、その伸びやかな歌声と豊かな表現力で「青い珊瑚礁」「夏の扉」「赤いスイートピー」など次々とヒット曲を放ち、一躍女性アイドルのトップの座に躍り出た。女性アイドルの歴史は、松田聖子以前と以後に分けられると言っても過言ではない。