なんと日本隊だけで「1万7000個」も発見した…!奇跡の1969年に見つかった「大量の隕石」からの新発見と「残念な結果」
南極の隕石発見ラッシュ
2月8日、メキシコのチワワ州で火球が観測され、その後に大量の隕石が降り注ぎました。その重量は、合わせて5トンほどといわれ、そのうちの約3トンが回収されました。 炭素を比較的多く含んでいるので「炭素質コンドライト」に分類されたそれらの隕石は、落下地点付近の村名をとって「アエンデ隕石」と名づけられました。これだけ大量で、ほぼ均質な隕石が入手されたことは、その後の太陽系形成過程の研究に重要な役割を果たしたのです。 そして9月28日には、オーストラリアのビクトリア州マーチソン村の2km南に大量の隕石が降り注ぎました。これらは200kgほどが回収され、「マーチソン隕石」(図「マーチソン隕石」)と名づけられました。やはり炭素質コンドライトに分類されたこの隕石の重要性は、またくわしく述べます。 そんな奇跡の年も暮れようとしていた12月、またしても、今度は南極で新たな隕石の発見がありました。日本の第10次南極地域観測隊がやまと山脈付近を探査中、9個の隕石を発見したのです。複数の隕石があっても通常は、マーチソン隕石のように、1つの隕石が何個かに壊れたものであることが多いのですが、これらは異なる6種類の隕石を含むものでした。
なぜ同じ場所で大量に発見されたのか
南極の雪原で隕石が見つけやすいことは想像がつきますが、同じ場所に何個もの隕石が落ちてくるのは考えにくいことです。のちに、南極の特定の場所で多数の隕石が見つかる理由は、次のように説明されました。 隕石は南極大陸の広い範囲にわたって落ちて、氷の中にめり込むのですが、南 極の氷がゆっくりと海に向かって流れるとき、隕石も氷と一緒に移動します。しかし、途中で出っ張りなどがあると、氷はそこでせき止められて留(とど)まります。やがて氷が昇華してなくなると、多数の隕石がそこに姿を現すことになるわけです(図「南極の隕石が集積するしくみ」)。 南極で複数個の隕石が発見されたことは、国際的に注目を浴びました。それ以前には、南極では散発的に6個の隕石が見つかっていただけでした。 隕石が集積する場所が見つかれば、多くの隕石を一挙に採集できる可能性があります。日本隊に続いて、米国隊などが南極での隕石集めに本腰を入れるようになり、日本隊だけで1万7000個ほどを採集できました。現在では、隕石といえば南極で見つかったものが主となり、他の場所で見つかったものは「非南極隕石」と分類されているほどです。 また、これだけ多数の隕石が見つかったことで、さまざまなことがわかってきました。それらの中には炭素質コンドライトが一定の割合で含まれること、一方では特殊なものも含まれること、などです。月や火星から来たことが判明した隕石もありました。火星から来た隕石の一つが、やがて大騒動を引き起こした話は『生命と非生命のあいだ』の詳しく述べましたので、ぜひご一読ください。 さて、そうした隕石の中には、生命の材料となるアミノ酸が含まれるものもあるのではなはないかと予想されたのです。