94歳の産婦人科医・堀口雅子「当時の産婦人科医は男性ばかり。同じ女性だからこそできることもあるはずとこの道へ。気に病まないのが一番の薬」
女性ホルモンが減少すると、気分が落ち込みやすくなるもの。産婦人科に女性の医師が少なかった時代から60年以上、女性たちの悩みに寄り添ってきた堀口雅子さん。今悩みの渦中にいる人に向けたアドバイスは(構成=樋田敦子 撮影=藤澤靖子) 【写真】雅子さんと同じく産婦人科一筋の夫・貞夫さんと * * * * * * * ◆話すことによって、人は解放される 先月末、誕生日を迎えて94歳になりました。夫の貞夫に「私、何歳になったっけ?」と聞いたら、94と言われて本当にびっくり(笑)。そんな夫ももう91歳ですから、二人ともいい年だわね。夫婦で協力しながら、なんとか暮らしています。 私は、30代の初めに医師になってから産婦人科一筋。数年前までは定期的に病院で診察をしていたのですが、最近は不定期にお電話で相談を受けるくらいです。連絡してくるのは、心や体の悩みを抱える女性たち。年代は10代から更年期を過ぎた女性まで、さまざまです。 そもそも産婦人科というのは、出産に限らず女性が抱える心配事を扱う場所なのですよ。月経の不順やパートナーとのセックス、不妊や子育ての葛藤、更年期の不定愁訴……。そして、相談してくる女性たちの悩みは、私自身が通ってきた道でもあります。 『婦人公論』の読者は、更年期以降の年代が多いのでしょうか。65歳以降の「老年期」では、更年期ほど女性ホルモンの減少は急激ではないものの、シミやシワが増えたり、足腰が弱くなったり、以前とは違う自分を目の当たりにして、うつうつとすることも少なくありません。
また、家族の問題が起こってくる時期でもあります。夫が定年を迎えることで関係性に変化があったり、子どもの巣立ちによって「空の巣症候群」に陥ったり。親しい方との別れなども経験するでしょう。それらが心の負担になることもあるのです。 そんな方々に、皆さんより少しだけ人生の先輩である私がアドバイスするなら、「人間はみな年を取っていくもの。自分だけじゃない」と考えるようにすること。 年を重ねれば、シワも増えるし、体もうまく動かなくなる。けれど失ったものを数えて嘆くのではなく、少しずつ新しいステージに自分をなじませていく。そう捉えることが大切だと思います。 ただ、心の不調が続くようなら、迷わず精神科や産婦人科の医師に頼りましょう。その際は、複合的な視点で治療を提案してくれる医師を選ぶようにしてください。 私は一貫して診察中の《おしゃべり》を大事にしてきました。話すことによって人は解放される、というのが私の考え。対話療法とでも言うのかしら。自分の話をじっくり聞いてもらえると嬉しいものでしょう。とかく女性は親や夫に悩みを相談しても、「そんなもの知るか」と真剣に聞いてもらえないことが多いもの。 だから医師である私がその悩みの受け皿になろうと考えてきました。患者さんは話すことで自分の気持ちが整理できますし、私はその話から医師としてどうアプローチしていけばいいのかがわかります。 更年期以降の悩みを持つ人に、体内で起こる変化を医学的に説明したうえで、「みんなそうやって通り過ぎていくから、あなたもそんなに心配しなくて大丈夫よ」と伝えると、皆さんホッとした表情になりますね。
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