なんと、ローマ軍が「最も恐れた兵器」をつくった天才は、人類史上「最も偉大な発明」もつくった…!その原理と発想が現代的すぎる…
人類史上「最も偉大な発明」
人類は古来、さまざまなものを発明してきたが、私が最も偉大な発明と思うものが「歯車」と「ネジ」である。 きわめて簡単な構造でありながら、その応用範囲と有用性が多大なものはネジと歯車をおいて他にあるまい。ネジが、自然界に存在するさまざまな螺旋構造、たとえば巻き貝をヒントにして発明されたものであることは間違いない。 このネジの発明者が誰であるかについては諸説あるが、有力な候補として登場するのがアルキメデスである。ネジ、つまり螺旋構造を応用したものの1つが、以下に述べる「螺旋型ポンプ」である。 この螺旋型ポンプは“アルキメディアン・スクリュー”とよばれているので、その発明者はアルキメデスと考えるのが一般的である。アルキメデスの数学分野の研究テーマの1つに螺旋があるので、アルキメデスがネジ、さらには螺旋型ポンプの発明者であることには説得力がある。
佐渡金山でも使われた
螺旋型ポンプ(アルキメディアン・スクリュー)の概略を図に示す。 円筒の中の螺旋状に取りつけられたブレードをもつ軸を回転させると、ブレード上に取り込まれた水が順次、下から上へ運ばれるしくみになっている。 ブレードは、ヤナギかキヌヤナギを平らな帯板状にし、耐水性を上げるために松ヤニを塗って、回転軸のまわりに斜めに巻きつけられた。回転軸の外側には円筒状の踏み車が取りつけられ、人間がこの上に乗って両足で回転させた。 ポンペイの壁画に、一人の奴隷が墓地門のような小さな建物の陰に立って、踏み車を両足で回転させているようすが描かれているそうである。また、螺旋状のブレードがついた回転軸は、水車や風車と連動させて回転させたことも考えられる。 この螺旋型ポンプはもともと、ナイル川の灌漑(かんがい)用につくられたが、さまざまな大きさのものがさまざまな分野で使われた。江戸時代、日本の佐渡金山で、同様のしくみの揚水ポンプが使われたという記録もある。 この螺旋状ブレードの回転原理は、現在ではモーターなどを動力源として、真空ポンプやコンプレッサーなどのさまざまな装置に応用されている。 また、“アルキメディアン・スクリュー”が運ぶ物質は水のような粘性が小さい液体のみならず、他の形式のポンプでは困難な粒状の穀物や小さな固形物が混在した泥状の液体、あるいはゲルのような物質の運搬に不可欠な手段になっている。 * * * 続いては、2000年も前に「エンジン」や「自動ドア」を発明していたという彼の数学上の大功績「ヘロンの公式」を紹介しましょう! 古代日本の超技術〈新装改訂版〉 古代世界の超技術〈改訂新版〉
志村 史夫(ノースカロライナ州立大学終身教授(Tenured Professor))
【関連記事】
- 【続き…謎だらけの、古代ローマの発明王・ヘロン】彼の定理が美しいほどに簡潔…「ピタゴラスをも凌駕する」その価値は「一般性」にあった
- 【読み逃し配信…前回】紀元前3世紀のシラクサの戦いで、ローマ軍を退けた秘密兵器は、なんと「ソーラーレーザー」…太陽エネルギーを集めて、敵艦を殲滅
- 【シリーズ_1】浴槽のあふれるお湯で「2000年以上にわたる原理」を発見…!喜びで「思わず裸のまま街に飛び出した逸話」も2000年以上残ってしまった天才の実名
- 【日本史版・究極の謎解きサイエンス】邪馬台国の場所は「日食」で特定できるか
- 【こちらは、現代クリエイター】「残り15%のこだわり」を妥協したら、「ソニーではなくなってしまう」…最高幹部が「重視する」、一見「矛盾」している「2つの鉄則」