動物行動学のプロが飼い犬に実践した「言葉を理解できる犬」に必要な4つのコマンド
言葉を理解できる犬は安心して暮らせるように
動物行動学の専門家 高倉はるか先生が、実家で昔飼っていた猫は、自分たちの名前を正確に理解し、自分以外の猫の名前を呼ばれても反応することはなかったという。 だが筆者の家の「むぎ」と言う名の猫は、それらしい音、母音に「ui」が入ると、「むい」でも「ぬい」でも返事をする。 どうしたら自分の名前をきちんと覚えるのか、と聞く筆者に、はるか先生はこう言った。 「むぎちゃんが聞き取れないのは、自分の名を正確に聞き分けられなくても、生きていくのに困らないからです」。 動物は、生きていくのに必要のないことは覚えないのだ。 だが先生は、飼い犬や猫が私たちの言葉を理解することは、飼い主だけでなく、動物にとっても重要だと言う。 動物が人の言葉を理解することが、なぜ重要なのか。 【写真】動物行動学のプロであるはるか先生が自宅の飼い犬に最初に教えたコマンド 東京大学、および大学院で獣医学を学び、在学中にカリフォルニア大学デービス校付属動物病院にて行動治療学の研究をされた高倉はるか先生の、ペットのお悩み相談に答える連載の後編。 前編「自分の名前を正確に聞き分けられる猫と“それっぽい”名前全てに反応する猫がいる理由」では、犬がどれくらい言葉を理解できるのか、はるか先生の飼い犬、オスのラブラドールレトリーバーを例にお話しいただいた。 犬は飼い主の言葉を理解することで、自分の置かれた状況を理解し、安心して暮らせるようになる。また、飼い主の話を聞き取り、飼い主の望む行動をとろうとするようになるため、飼い主、ペット双方にいいことだと言う。 後編では、犬に言葉を覚えてもらう具体的なやり方を教えてもらった。 以下、はるか先生の言葉でお伝えする。
犬は「褒めて伸びる」動物
犬に芸をさせたり、人間の助けとなる仕事をさせることを、「かわいそう」という人がいます。犬が望まない時に無理にやらせれば、確かに「かわいそう」なことですが、適切なトレーニングや訓練は犬の楽しみにもなります。 犬は飼い主が喜ぶことをしてあげたい、飼い主を喜ばせたり、褒められたりすると、嬉しくなる動物だからです。 犬をトレーニングする上で、一番大切なことは、トレーニング中は失敗しても怒らないことです。これはすべての訓練に共通して言えることです。 犬は、とにかく褒めて育てる。教えたことができなかったり、他のことに夢中になって聞き逃してしまったからといって怒れば、犬の気持ちが一気にしぼみます。そんな状態でトレーニングを続けても、何も頭に入ってきません。 動物は基本的には、自分が生きる上で必要な事しか覚えないからです。 犬にとってトレーニングは、飼い主さんと過ごす「楽しい時間」でなければなりません。トレーニング中は、犬がいかに楽しくワクワクできるかが大事です。 次に飼い主さんは何を言うかな、自分は何をすると褒めてもらえるかな。そんなワクワクした気持ちで覚えるような環境をつくってあげてください。 そうすれば早く言葉を習得します。 もちろん普段は悪いことをしたら叱ります。ただ叩いたり、怒鳴ったりはなし。「ダメ」「ノー」と言って、怖い顔をして見せるだけで犬には伝わります。