動物行動学のプロが飼い犬に実践した「言葉を理解できる犬」に必要な4つのコマンド
「待て」ができない子もいる
犬と言っても子どものうちは、「待て」と言われても待ちきれなくて食べちゃうこともあるし、我慢できない仔もいます。 幼な過ぎる仔、食いしん坊な仔で失敗が続くようならいったん訓練はストップ。もう少し大人になって、落ち着きが出てから、再開することにしましょう。 食べることに興味のない子は、普段のフードとは別に、ジャーキーなど特別なおやつを使うといいと思います。反対に食べることに執着する仔は誘惑が強すぎると我慢できないので、普通のフードにします。 人間もそうですが、落ち着きがなかったり、集中力がない時は、何度やっても頭に入りません。 何か新しい言葉を聞いた時に、何と関連付ければよいか、考えられるようになると言葉の習得も早いのは、人間も犬も一緒です。 例えば「おすわり」も「待て」も、初めて教えられる犬からしてみれば、飼い主の言う言葉が自分に何かを示していることさえわかりません。けれども1つでもコマンドを知っている犬は、こちらが何かしてもらいたいと思っていることがわかります。 それをわかっているかどうか、何事も最初の一歩が一番大変です。 小さいうちからトレーニングするのであれば、ハードルは限りなく低く。仔犬は落ち着きも集中力もないので、覚えてもらうのはなかなか難しいのです。厳しくトレーニングしたために、トレーニングの時間が嫌いになってしまっては、元も子もありません。 「おすわり」と「おいで」の2つができさえすれば十分くらいに思ってあげてください。 犬は、飼い主が自分をどう評価しているか、とても気にする動物です。 飼い主から何も言ってもらえない犬は、飼い主が何を考えているのかがわからず、不安になることも。 そんな時「おすわり」や「待て」のコマンドを出し、犬がやったら「えらいね」とか「いい子だね」と言葉をかけてあげると、犬は飼い主が自分に求めることを知り、応えて褒められることで自分の行動は正しいと思える。その積み重ねで自信をつけていくんです。 人を育てるには自己肯定感を持たせることが大事とよく言いますが、犬も同じです。コマンドを教えて、できたらたくさんほめる。それは、犬の自己肯定感を育てるとともに、信頼関係も強くすることになるのです。 大切なのは、犬との信頼関係を高めること。 言葉を教えるのは、そのためのツールです。トレーニングに必死になり過ぎないよう、たくさん褒めながら楽しく進められるといいですね。
高倉 はるか(獣医師)