まだ見ぬ逸材や文化を伝えるサーフィンショップ「スタニングフォイル」がオープン。
懐かしさが残る商店街があり、洗濯の歴史資料館もあり、昭和のくらし博物館もある。そんな古き良き街・下丸子を歩いていると、違う角度でクラシックな雰囲気を放つショップが目に留まる。レンガ造りのマンションテナントのショーウインドウに映るのは〈ハーマンミラー〉のシェルチェアに、ヴィンテージ・サーフボード、古着のTシャツやシャツも。 東京五十音散策 下丸子④
中に入ると、アースカラーのピカピカのサーフボードが大量にラインナップしている。本場カリフォルニアから届いたばかりの新作たちのようだ。「海外のナウなサーフカルチャーに詳しい人でも、意外と知らなかったり、見たことがないボードが多いんじゃないかと思います」と教えてくれたのは店主の藤本浩一さん。尋ねるとお店は今年の4月にひっそりとオープンしたばかりで、まだまだこのあたりのサーファーにさえ存在を知られていないという印象だった。
藤本さんは、約30年もアパレルの企画・生産業を仕事にしてきたが、長年趣味だったサーフィンにもっと浸りたいとこの店をスタート。店を始めるまでは身を潜めたサーフボード・コレクターで(本数は差し控えるが倉庫を要していたほど)、新旧問わず国内外のあらゆるサーフボードビルダーの特性を研究する日々に明け暮れていたという。周りに見られるから、と所有している自慢の‘70年式アルファロメオ・ジュリアにボードを積むことはなく、海に向かうときは違う車でいつも人っけのないスポットへ。いくら凄い趣味人でも“目立ちたがらない側の人間”の開業となれば、普及も簡単ではなさそうだ……。
「まあじっくり浸透していけばいいと思っています」と笑っていたが、はっきり言ってサーフィン業界はめちゃくちゃレッドオーシャンだ。でも藤本さんいわく、これだけの情報社会でもまだ日本に伝わっていないボードビルダーのユニークなシェイピングがあるし、そんなサーフボードが味わわせてくれるまだ見ぬ乗り味や景色があるのだそう。ちなみに扱っているサーフボードレーベルは〈マスト〉に〈ワイアット・ペンダー〉、〈ミカベイツ〉、〈メスレス〉など。無論、これらは日本初の取り扱いゆえ、国内での認知度は極めて少ない。