大丈夫、「死」には慣れます…難しくない、受け入れればきっと「恐怖」はなくなります
15歳男子の悩み
新聞の人生相談のコーナーに、「死ぬのが怖い 15歳男子」と題した記事が出ていました(『読売新聞』二〇二一年十月四日付)。人間が死んだらどうなるのか、死の恐怖を克服して、一度きりの人生を思い切り楽しむにはどうすればいいのかという相談です。 回答者は、自分の尊敬する人の自伝をじっくり読んで、どんな人生を送ったかを学び、充実した生を知れば、死についても知ることができるでしょうと答えていました。 たしかに、充実した生を送っている人は、死の恐怖など感じていないのかもしれません。しかし、なかには単に忙しすぎて、死の恐怖を感じるヒマがないというだけの人もいるのではないでしょうか。そういう人は、死の恐怖を克服しているとは言えません。ヒマになったり、死が目前に迫ってきたりしたら、改めて一から死の恐怖に向き合うのですから。 死の恐怖の理由は、自分が消えてしまうことの恐ろしさや、家族や親しい人との別れの悲しさ、自分の実績や人生の結果が無になることの口惜しさなど、いろいろあるでしょうが、最大の理由は、死後がどうなるかわからないという不安でしょう。 死んだあと、どうなるかわかっていれば、心の準備もできますし、ある種の納得も得られるはずです。 死後の世界については、“何モナイ派”と“何カアル派”に大きく分けることができます。“何モナイ派”の主張は簡単で、死んだら終わり、本人にとってはすべてが無になるという考えですが、それは生きている側からの観察で、死んだ側からの根拠は示されていません。俗に言う「ないことの証明は困難」ということです。しかし、蓋然性は高いのではないでしょうか。 “何カアル派”は、天国や地獄や極楽や、魂の不滅やら生まれ変わりやら、いろいろイメージを膨らませますが、当然、どれにも根拠はありません。あることの証明は、一つでも実例を示せば事足りるのですが、今のところいずれも示されていません。 “何カアル派”の主張は、死の恐怖を和らげるためには大いに有用でしょうが、蓋然性が低いのが困ったところです。 さらに連載記事<じつは「65歳以上高齢者」の「6~7人に一人」が「うつ」になっているという「衝撃的な事実」>では、高齢者がうつになりやすい理由と、その症状について詳しく解説しています。
久坂部 羊(医師・作家)