成年後見制度を使って認知症高齢者から巨額資産を横領し、ギャンブルに費やした「悪徳司法書士」の告白…「一気におカネを取った」
週刊現代(2024年3月30日号)は、東京司法書士会で消費者問題対策委員長や港区支部長を務めたM司法書士が、成年後見制度を悪用して、認知症の人に黙ってお金を引き出し競馬やtotoなどに使っていた事件をスクープした。 【マンガ】5200万円を相続した家族が青ざめた…税務署からの突然の“お知らせ”
そっけない対応
その事件で新たな展開があった。本誌の報道を読んだ東京都在住のSという女性から、「報道を見て初めてM司法書士が横領していたことを知り驚きました。M氏は私の叔父と叔母の成年後見人をしていました」と通報があったのだ。 M司法書士は、約10人の被後見人の口座から億単位のお金を引き出したことがわかっている。被害総額は「3億円とも言われている」(東京司法書士会関係者) Sさんはこう話した。 「叔父、叔母のお金も盗まれた可能性があると思い警察に相談したのですが、『調査中』を理由に何も教えてくれませんでした。M氏を後見人に選任した東京家庭裁判所からも何の説明もありません。 またM氏が会員だったリーガルサポート(日本司法書士会が後見業務を受注するために立ち上げた内閣府所管の公益法人、以下リーガル)の専務理事にも電話しましたが、 『回答できない。Mがしたことは家裁に情報開示を申し立てれば分かるのでは』 とそっけない対応でした。M氏が叔父、叔母のお金を横領したかどうか、取材して頂けませんか」
国連も懸念を表明
成年後見制度は、認知症などで判断能力が十分でない人の財産と権利を守るために、家庭裁判所が司法書士や弁護士、親族などを後見人に選任して認知症の人(被後見人)の財産管理などをさせる制度だ。 しかし横領事件の頻発に加え、いったん利用すると認知症の人が亡くなるまで事実上止められず、後見人の8割を士業(司法書士と弁護士)が占め、親族は後見人に滅多になれないなど様々な問題が指摘されており、利用者は24万人に留まっている。 2022年10月には国連「障害者の権利に関する委員会」が、日本の制度を「障害者が法律の前に等しく認められる権利を否定している」と懸念を表明、「差別的な法規定及び政策の廃止」と民法改正を日本政府に勧告している。 成年後見制度では、親族後見人は原則無報酬であるのに対し、士業後見人は被後見人の預貯金総額に応じて、毎年24万~72万円程度の報酬を預貯金から降ろすことを家庭裁判所から認められている。 ところがM氏は報酬以上の巨額のお金をこっそり引き出し、ギャンブルなどに流用していたのである。 横領が発覚したのは、昨年3月にM氏が警察に自首したのがきっかけだった。その後、今年2月にリーガルがM氏を除名。本誌は、それを受けて報道した。 本誌の直撃取材にM氏は、 「昨年からずっと警察の取り調べを受けている。(認知症高齢者の)財産を管理していたから、つい思いついてやってしまった。(お金の使途は)競馬とか、ほかにtotoとか。大それたことをしてしまった」と事実を認めた。 自首したのに逮捕されていないのは、M氏が捜査に協力的で逃亡の恐れもないためとみられる。警察による事件捜査はいまも続いている。