神戸連敗ストップ裏に三木谷氏“鶴の一声”?!
負ければJ2降格圏の17位に、3点差以上の大敗を喫すれば最下位に転落していたヴィッセル神戸を救ったヒーローは、生後9ヵ月の長男、ドミニキちゃんを抱きかかえながら、ホームのノエビアスタジアム神戸内の取材エリアに姿を現した。 「常に自分の力を信じて準備をしてきた。チャンスがきたら絶対に結果を残す、チームのために必ず貢献することができる、と自信をもってプレーしたことが結果につながったと思う」 メディアが差し出すICレコーダーに興味を示したドミニキちゃんが、手に取ろうと何度もフェンス越しに手を伸ばす。そのたびにやんわりと静止させる作業と並行させ、表情には苦笑いと充実感を同居させながら、2得点1アシストの活躍を演じたFWウェリントン(31)はポルトガル語を紡ぎ続けた。 「2つとも自分の特徴を生かした、クロスからのゴールだった。練習中から仲間たちとコミュニケーションを取りながら、自分がどのようなボールを待っているか、といったディスカッションを積み重ねたなかから生まれたゴール。チーム全員で手にしたゴールなのでとても嬉しい」 リーグ戦でクラブワースト記録を更新する7連敗。公式戦では9連敗と泥沼にあえいでいた状況で迎えた26日の明治安田生命J1リーグ第13節。フアン・マヌエル・リージョ前監督(53)の電撃辞任を受けて、4月17日に再登板を果たした吉田孝行監督(42)は大きな決断をくだした。 最終ラインを4バックから3バックへとスイッチ。まず守備を安定させ、前監督のもとで目指していたボールポゼッションに、前線へのロングボールやカウンターも織り交ぜられたなかで身長188cm、体重90kgの巨体を誇るウェリントンは中央で体を張り続けた。
試合は1-3で敗れたものの、22日の名古屋グランパスとのYBCルヴァンカップでも3バックが導入された。その一戦で先発フル出場し、一時は同点に追いつくゴールを決めたウェリントンは「プレーしていた選手たちは、守備のベースなどで手応えを感じていた」と舞台裏を明かす。 「このシステムで戦う以上は、今日の試合で使ったハイボールなども含めて、何が自分たちのストロングポイントなのかがわかってきた」 ともに無得点で迎えた後半9分だった。右サイドを突破した右ウイングバック・西大伍(31)があげたクロスにファーサイドで反応したウェリントンが、宙を舞いながら必死に右足を伸ばす。アウトサイドから放たれた豪快なボレーが、ゴールネットを揺らした。 同28分にはゲームキャプテンのMF山口蛍(28)のパスを、ヒールで巧みにゴール前へ流す。以心伝心で走り込んできたMF三田啓貴(28)の追加点をアシストすると、同41分には5試合ぶりに復帰した元ドイツ代表FWルーカス・ポドルスキ(33)が送ったクロスに再びファーサイドで反応。豪快に頭で叩き込み、前節に誤審をはね返す逆転勝ちを収め、波に乗っていた古巣に引導を渡した。 「自分はニアサイドに突っ込むタイプではないので、真ん中からファーサイド寄りにボールがほしいといつも話してきた。1点目はダイゴ選手がタイミングを溜めてくれたので、ニアへいく振りをして上手くマークを外してシュートを打てた。2点目はルーカス選手のクロスが完璧だった」 2年半所属したアビスパ福岡から期待を背負い、昨シーズンからヴィッセルへ完全移籍した。しかし、新天地になかなか順応できず、不本意な日々が続いたなかで、夏の移籍市場の解禁へ向けて湘南ベルマーレへの期限付き移籍が水面下で進んでいた。 ヴィッセルではワールドカップ・ロシア大会による中断明けから、スペイン代表とFCバルセロナで一時代を築いた至宝、アンドレス・イニエスタ(35)が加入することが決まっていた。大けがで2017シーズンを棒に振った2016シーズンのJ1得点王、レアンドロ(34)も戦列復帰を果たしていた。 外国籍選手が余剰気味になりかけていたこともあり、交渉は現場サイドでまとまりかけていた。ベルマーレとしても2013シーズンの途中に加入し、J2を戦った2014シーズンにはリーグ2位の20ゴールをマーク、今シーズンも指揮を執る曹貴裁(チョウ・キジェ)監督(50)のもとで、ハードワークと献身性も身につけたウェリントンの復帰は、最高の補強になるはずだった。