神戸連敗ストップ裏に三木谷氏“鶴の一声”?!
しかし、思わぬところから突如として「待った」がかかった。ウェリントンは中断の前後に行われた3試合で4ゴールをゲット。大活躍を目の当たりにした、ヴィッセルを運営する楽天ヴィッセル神戸株式会社の三木谷浩史代表取締役会長(54)の“鶴の一声”で、交渉は一転して白紙となった。 オーナーを務めるプロ野球の東北楽天ゴールデンイーグルスでも行われていたとされる、楽天株式会社の代表取締役会長兼社長でもある三木谷氏による現場への介入。ベルマーレとの件では介入というよりは会長として最終的な判断を下した形だが、ウェリントンを急転残留させ、レアンドロをJ2の東京ヴェルディへ完全移籍させた当時の決断が、時を越えて奏功したことになる。 元スペイン代表の点取り屋ダビド・ビジャ(37)に続き、開幕後にはバルセロナからMFセルジ・サンペール(24)も加わった今シーズン。外国籍選手のベンチ入りと出場がともに5枠に拡大されながら、ベンチにすら入れない状況が続いてもウェリントンは腐らなかった。 ベルマーレの一員としてJ1を戦った2013シーズン。最後は6連敗とともに幕を閉じ、J2降格を喫しながらもチーム全体のベクトルが一度もぶれなかったことで、翌シーズン以降の飛躍につなげた経験を、今シーズンのヴィッセルにも還元した。 「仲間たちとしっかり話すこと、向き合うことを大事にしてきた。練習中の雰囲気がよくないと、みんな結果ばかりを考えてしまって、変に緊張してしまうので、いい意味でリラックスできる雰囲気を作ろう、という話をみんなでしていた。今日勝ったことで、また勢いが加速されると思う」 おりしもプレミアリーグの名門アーセナルを22シーズンにわたって指揮した名将、アーセン・ベンゲル氏(69)を新監督に招へいすべく、ヴィッセルがオファーを出したと複数の海外メディアが報じた。外部の騒音が絶えない状況で三木谷会長はベルマーレ戦を観戦後に、オファーを含めて「具体的な動きはないです」と同じ言葉を3度繰り返した。 ヴィッセルでは勝利した試合後のゴール裏で、選手やサポーターが一体となって『神戸讃歌』を大合唱する。聖なる儀式にベルマーレ戦後は、ベンチ外の選手やスタッフに加えて三木谷会長も参加。コンディション不良で2戦続けてベンチ外となったイニエスタと、肩を組んで喜びを共有した。 「気持ちが出ていてよかったんじゃないですか。これからまたみんなで、頑張ってくれると思います」 チームの内外に巣食っていた不安や鬱憤を吹き飛ばす、吉田監督になってから公式戦9試合目で手にした初勝利。自らの判断で移籍を止めたウェリントンも大活躍したとあって、用意されたタクシーに乗り込む三木谷会長の表情は満足感と高揚感に満ちあふれていた。 (文責・藤江直人/スポーツライター)