なぜ森保JはW杯グループリーグで対戦予定のない南米勢の強豪ブラジルとの強化試合を交渉しているのか?
大会を間近に控えた期間は強化試合を組むよりも、カタールの気象環境に慣れた上で、コンディションを調整していく作業がメインになる。必然的に2試合を組める、9月の国際Aマッチデー期間をもって代表メンバーを決める必要性が出てくる。 6月と合わせてヨーロッパ組を招集できる実戦は最大6試合。新戦力の発掘を含めてチームの幅を広げていくのか。それとも、アジア最終予選を戦ってきたチームをさらに熟成させるのか。特に6月に関して、森保監督も「本当に難しい」と頭を悩ませる。 「当初はより多くの人数を呼んで、2チームで活動して2試合ずつを行うことも考えていたが、そうした余裕があるのかと考え直している。最終的に結論は出ていないが、例えば40人も50人も選手を呼んだときに、その活動にどれだけの意義があるのか。強化の観点や日本全体のベースを上げていくところを、しっかり考えていかないといけない」 指揮官が描く青写真は、現状では熟成の方に傾いている。 先のアジア最終予選で招集した26人に、故障中だったFW大迫勇也(31、ヴィッセル神戸)やDF酒井宏樹(32、浦和レッズ)、DF冨安健洋(23、アーセナル)、FW古橋亨梧(27、セルティック)、FW前田大然(24、同)を加え、さらに選外だったMF鎌田大地(25、フランクフルト)やMF堂安律(23、PSV)を加えれば十分な人数になる。 もちろん扉をすべて閉ざす考えはないが、強化に注げる時間も、1試合で起用できる選手数も限られている状況では決断を下さざるをえない。森保監督はこう続けた。 「ワールドカップで優勝を経験している強豪国に勝つ、あるいは勝ち点をしっかりと取れる戦いができるように、自信を持って臨めるように準備していきたい。世界に追いつき、追い越すためには同じ目線で戦わなければいけない。学ぶべきところはあると思うが、もちろん勝つために準備する。見上げるだけの戦いをするつもりはない」 オンライン取材における発言をあらためて聞けば、これまでの対戦成績が2分け10敗と未勝利が続き、得点5に対して失点34と圧倒的な力の差を見せつけられたブラジルとの対戦を前提として、現状におけるベストメンバーで臨む考え方が伝わってくる。 未消化の南米予選の日程にもよるが、実現した場合、おそらくは国立競技場にブラジルを迎える可能性が大きい。カタール大会出場国との腕試しを求めるのならば、札幌ドームでの一戦はネーションズリーグがない北中米カリブ海勢が理想だ。 日本を含めた4ヵ国がトーナメント形式で6月10日にノエビアスタジアム神戸で、14日にはパナソニックスタジアム吹田で戦うキリンカップは、ブラジル以外の南米勢、すなわちアルゼンチン、エクアドル、ウルグアイを呼べれば最高だ。 そして海外遠征も視野に入れる9月は、同じく北中米カリブ海のネーションズリーグが組まれていないために空いている。ヨーロッパ勢以外の強豪、それもカタール大会出場国といかにマッチメークできるか。JFA技術委員会の手腕が問われようとしている。 (文責・藤江直人/スポーツライター)