freeeが手掛ける「透明書店」 収益をすべてネットで公開中
また、透明書店をやる前から、僕たちは「freee出版」という出版レーベルを持っていて、本を出す文脈も社内にありました。書店をやってみよう、というアイデアは自然な発想だったんです。 freee出版は、どのような本を出しているんですか。 岩見:大きく2種類あって、「起業時代」という雑誌と、スモールビジネスのヒントになる書籍です。書籍は超ニッチなビジネスを紹介する『ウルトラニッチ』(川内イオ・著)、倒産社長8人から学ぶ対談集の『倒産した時の話をしようか』(関根諒介・著)、子供時代の夢中体験をテーマにした『こどもの夢中を推したい 小中学生の遊び・学び・未来を考える7つの対談集』(佐藤ねじ・著)という3冊を出しています。 日経と「ほぼ日」が融合したようなテーマ設定ですね(笑)。出版物は取次を通して流通させているのでしょうか。 岩見:日販アイ・ピー・エスに営業・流通のご協力をいただきながら、各種取次経由で商業的に流通させています。 なるほど。スモールビジネス・スピリッツで、まさに出版と書店の両方に携わっているんですね。 ●スモールビジネスのサンプルとして収益をすべて公開 岩見:「透明書店」では実験的な店舗として、書籍とグッズ販売に飲食も加え、さらにギャラリーや棚貸しも行い、イベントも催しています。書店という業態は、物販や不動産業的なテナントリーシング、イベント業と、いろいろな業種、事業との親和性が高く、カルチャーのハブになるところも魅力ですね。 サブカル好きな知り合いが、最近、個人事業主としてオウンドメディアを回し始めました。各社のバックオフィス支援ソフトがある中で、「透明書店」をやっているからfreeeにした、と聞きました。 岩見:それはうれしい、ありがとうございます。「透明書店」の活動を知った方が、「freee、推せるわ」という気持ちになって、うちのソフトを選んでくださるというのは、僕たちのブランディング活動の1つの目的ですので、実例を伺うとうれしいです。 うちのようなBtoB企業がつくるソフトは、他社競合も含めてコモディティー化していく過程で、どうしても価格競争になります。その時に、多機能や使い勝手で勝負するとともに、情緒的な価値を付けて、顧客から愛着を持っていただきたい。その最新の活動が「透明書店」とも言えるのです。 「透明書店」はオープンから1年にわたり、初期投資から月ごとの売り上げ、利益をその名の通り全部開示して、透明性を打ち出されました。これは、すごくラジカルな試みです。 岩見:はい、包み隠さず、あけすけにやってきました(笑)。 なかなか踏み出せることではないと思いますが、社内で議論はなかったんですか。 岩見:もちろんありました。IRの観点で言えば、赤字続きの時に投資家から批判がきてもおかしくありませんし、リスク管理の観点から言っても、簡単な決断ではありません。でも、僕たちは書店事業以上に、ブランディングとマーケティングのためのアプローチと捉えていたので、議論を事前に全部行った上で事業に踏み出しました。