freeeが手掛ける「透明書店」 収益をすべてネットで公開中
(前回から読む→「日本独特の「取次」が経営する本のホテルと喫茶店」) 「書店復興」のシリーズでは、直木賞作家・今村翔吾さんのアクションを起点に、書店業態で新たな挑戦をしている事例を追っています。2023年4月、会計ソフト会社freee(フリー)が東京・蔵前で開いた「透明書店」は、初期費用から月ごとの売り上げ、利益などすべてを文字通り“透明”に開示するという、大胆な運営が話題を呼びました。オープン1年を経て、その手応えをお聞きします。 【関連画像】透明書店の外観(写真=猪俣 博史、以下同) 2023年4月、東京・蔵前にオープンした「透明書店」は、近年、“セントラルイースト東京”として人気が高い蔵前エリアの一画にあります。店内の棚は新刊、リトルプレス、棚貸し(シェア型)と、バラエティーを持たせた約3000冊の品ぞろえ。ギャラリースペースも設置し、店内ではコーヒーやクラフトジンも販売して、店頭のテラスでそれらを楽しむこともできます。 それにしても、本とは関係のないITスタートアップが、なぜ衰退業態といわれる書店を営むのか。その経緯から聞かせてください。 ●バックオフィス業務の会社がなぜ本屋さんを? 岩見俊介さん(以下、岩見):freeeは12年の設立で、クラウド型の会計ソフトをはじめ、バックオフィス業務全般のソフト開発・提供を行っています。僕たちのメインユーザーは、個人事業主や中小企業主と、いわゆるスモールビジネスを担っている方々です。ほかならぬ当社も、創業した当時は社員数も少なくて、自分たちで経理や給与計算を行い、それをソフト開発に生かす、というサイクルでやってきました。 現在は従業員が1000名を超える規模になり、大企業化する中で、メンバーが創業時のチャレンジングな体験をする機会が減っています。そこで、自分たちの原点であるスモールビジネスに立ち返ろうという話になったんですね。 ということは、書店業というよりスモールビジネス支援業、と、とらえた方が正確ですか。 岩見:本質はそこになります。freeeのビジネスはITの無形産業で、店舗や在庫を持ちません。だったら、そこから一番遠い存在である小売業、店舗運営業を手がけることで、普段の業務では気づけないことが学べるんじゃないか、と考えました。 スモールビジネスの支援という時に、カフェや雑貨、アパレルではなく、書店を選ばれたのはなぜでしょうか。 岩見:そこは今村翔吾先生がお話しされている課題感とも通じるのですが、全国で書店の閉店が続いたり、大型書店でも苦戦していたりというニュースがある一方で、独立系書店、セレクト書店といわれる、個人の価値観を打ち出した書店は、むしろ増えています。 そうなんです。そこはすごく多様化していて、存在感のある書店がたくさん登場しています。 岩見:従来の書店というくくりでは、ちょっと表現しきれない状況は、僕たちfreeeが掲げている「スモールビジネスを、世界の主役に。」という、ミッションに通じていると考えたのです。