大阪の特産品で新たな名物誕生を 食の都・大阪GP
「大阪産(もん)」と呼ばれる大阪の特産品を素材に、料理人たちが創作料理を競い合う食の都・大阪グランプリ(GP)がこのほど行われた。新しい大阪名物が生まれるか、予選を勝ち抜いた料理人たちの決戦の場をのぞいてみた。 関西のおでん・関東煮で人気の「梅焼き」。魚摂取にも最適
GP作品は和と洋の調和で華やいだ非日常を演出
グランプリに輝いたのは、ユー・エス・ジェイの日高克典さん(46)。初出場でGP受賞の快挙だ。洋食・西洋料理部門にノミネートし、作品は「渡り蟹(わたりがに)の和風グラタン・大阪三つ葉の香り」。泉州特産のガザミや大阪三つ葉を使い、ユズポン酢で和と洋の調和を醸し出した。華やいだ非日常の世界だ。 日高さんは「カニの身をほじり出すのがたいへんで、指が痛くなりました」と序盤を振り返る一方、「しんどかったのはそれだけで、食材本来の持ち味を生かすため、レシピ的には割合シンプルな調理で美味しくできるよう工夫しました」と話す表情に充実感があふれた。 洋食の料理人ながら、和の要素をたくみに取り入れた。「私の今のマイブームはポン酢。受賞作品も和食感覚でどなたにも気軽に召し上がっていただけると思います」 大阪府出身。18歳から料理の道に進み、料理人歴は28年とベテランの領域に。受賞インタビューでは「お客さまに喜んでいただける料理を」と、顧客本位の姿勢を強調したが、バックボーンには料理人のプロ精神が息づく。 「料理には自由なイメージが大切で、美味しいと思えなければイメージが広がらない。試作を繰り返し、私自身が美味しいと納得できる料理を提供することを心がけています」。日高さんは笑顔で語った。
時計をにらみながら静かなる熱い戦い
会場は辻調理師専門学校(大阪市阿倍野区)。今回で8回目を迎え、洋食・西洋料理をはじめ和食・日本料理、中国・韓国・アジア料理、デザート・和洋菓子の4部門に247作品の応募があった。地域の料理コンテストとしては国内最大規模だ。各部門で4作品が優秀作品に選ばれ決勝へ。入場を辞退した1作品を除く15作品が料理人の手で作られ、GPを競い合った。 調理時間が限られている。料理人たちは黙々と仕込みの手を動かしながらも、ときおり壁に設置された時計をにらむ。ガス台で同時に大小4種類の鍋を操る料理人も。蒸し器の温度設定は83度と、1度単位で厳密に。練り上げたレシピとは言え、当日の食材の大きさや形状、品質も微妙に違う。調理によって食材の質感や風味、美しさなどにずれが生じかねない。 料理人の顔に、ときおりけわしい表情が浮かぶ。想定外の状況に反応しながら難局を乗り越えていくシーンを一度ならず見た。名料理人の条件には、瞬時の判断力や修正能力も含まれているようだ。制限時間が迫る中、盛り付けが始まると、独自の作品世界が鮮やかに浮かび上がってくる。最後の手が止まるまで息が抜けない。 次々と完成。作品を試食審査会場へ送り出す料理人たち。「何とか間に合いました」と、ようやく表情が和らぐ。与えられた条件下で最良の技量を注ぎ込む。プロの誇りだろう。