松任谷正隆と小原礼が語る、前人未到のバンドSKYEの最新アルバム『Collage』前編
70年代のビューティフルソウルとか、そこらへんをイメージしながら作った
Smiling Faces / SKYE 田家:小原さんの詞曲、そして歌。これが昭和のロックンロールだという(笑)。 小原:はははは! グループ・サウンズの感じです。 田家:こういうキャリアの重ね方、特に茂さんのギターがそういうふうに思わせるのかなと思いましたけども。 松任谷:小原はわりとギターにはうるさくて。 田家:もともとギターでしたよね。 小原:そうですね。 松任谷:だから、こうしてくれ、ああしてくれっていうのは結構茂に言ってましたよね。 小原:うん。 田家:この曲でもそうだった? 小原:この曲は茂がすごくいいメロディを出してきてくれたので、でも次のテイクだと、違うことやっちゃうんですよ、茂。あそこに戻ってって言って。それをテーマにしてくれっていうのは何回か言いました。 田家:茂さんがレコーディングで加わったアーティストの方が時間がかかるんですよっておっしゃったのは、そういうことなんでしょうかね。 小原:昔はそうでしたよね。本当に時間が。8小節のソロを8時間ぐらいやってたり。でも、最近はそうでもないよね。 松任谷:うん。いろいろパッとできるものもあるし、8時間は僕ね、たぶんギターを弾いていたかったんだと思うんですよ。 小原:でもね、それを聴いている方がね、みんな大変だって言ってたよ。 松任谷:あーそうだよね。 田家:待ってなきゃいけないという(笑)。詞の中のToo Oldという言葉、年齢がモチーフになっているわけですもんね。 小原:そうですね。Too Oldに関してはね。 田家:その中では昭和生まれとゴルフで、この「Smiling Facec」の中では亀と舞の海っていう、ある種具体性のある。 小原:これは基本的にポジティブなことを言いたい曲なので、単にそれだけの話で。それの中で楽しそうな言葉があるかなと思って探してたんですよね。 松任谷:僕ね、1つ疑問があって。新しいアレンジを誰かさんに頼んだらぐるぐるのスパイラルでって。誰かさんってまず誰だみたいな。俺じゃないよなって(笑)。 小原:そんな個人のことを言っているわけじゃない(笑)。 田家:実際に頼まれた? 小原:いやいや、想像上のことですから。誰かさんのことを言っているわけじゃない。 松任谷:アレンジとかって言われると、ぎょっとする(笑)。俺か!?みたいな。 田家:聴いている人で小原さんのことをご存知の方は民生さんのことをどこかで思い浮かべながら聴いたりする曲になっているのかなと。 小原:長いしね。それこそ23~24年になるから。もしかしたらそういうふうに聴こえるのかもしれない。 田家:影響がチラチラ見えるような。 小原:どうなんだろう。 松任谷:若い血を吸って(笑)。 小原:でも民生の詞は僕すごく大好きで、彼の着眼点とか言葉の使い方とか、こういう言葉を使わないとか、そういうところがすごく好きで。影響を受けているのは間違いないですね。 Bermuda / SKYE 田家:作詞が林立夫さんで、作曲が松任谷正隆さん。この曲も実験だったんですか? 松任谷:そうですね。なんかやっぱりR&Bをやりたくて、70年代のビューティフルソウルとか、そこらへんをイメージしながら作ったんですけれども。 田家:そのときに歌うということも頭にありながら。 松任谷:うーん、誰が歌うかは最初は全然イメージがなくて、なんだったら小原に歌ってもらおうかぐらいのところもあったんですけど。林が詞を書いてきて、おしゃれな詞を書いてきて。お、これが林の正体だと思っているんですけど、実は(笑)。 小原:そうね。かっこつけてる感じね。 松任谷:まあ、歌っちゃえみたいな感じで。 小原:あ、これも歌い直してたよね。5、6回。 松任谷:そう。だから、全部歌っても歌っても詞がくるんで、ほんっとうに。歌う方の身にもなってよっていう(笑)。 小原:よく簡単に変えて、これやってって言って来るよな。 松任谷:本当だよね。自分のときにやってやろうかっていう感じ(笑)。 田家:さっきおっしゃったキャラメル・ママのときからバンドで歌うイメージがあって、こうやって5、6回は歌い直したりするような、そういう歌との取り組み方。 松任谷:モチベーションは不思議と持てるんですよ。テクニカル的に昔とは違うじゃないですか。自宅でもできるし、何度でもやり直しができるし。だから、そういうのもあってモチベーションはどうなってもありましたね。 田家:しかも「Bermuda」ですからね。お2人も馴染みがあるところでしょう? 松任谷:僕はないけど、小原ある? 小原:僕はコンパス・ポイントにトノバンと行ってレコーディングをしたので。 田家:パパ・ヘミングウェイをね。 小原:あそこに行ったメンバーで生き残ってるの僕だけだから。 田家:ははは、すごい話だった。 松任谷:笑えないか(笑)。 小原:トノバンも教授も幸宏も大村憲司もみんないない。 田家:ですよね。 小原:僕だけですよ~。 田家:そのときの模様を語れるのは、もはや小原さんしかいません。来週はアルバムの後半について、いろいろお訊きしようと思います。来週もよろしくお願いします。