松任谷正隆と小原礼が語る、前人未到のバンドSKYEの最新アルバム『Collage』前編
SKYEに曲を書くときは、実験をするみたいな気持ちがいつもある
Too Old/ SKYE 田家:作詞作曲が小原礼さんです。歌もそうですもんね。 小原:そうです。 田家:それは自分で書いた曲は自分で歌うみたいなものもあったんですか? 小原:まあそうですけど、でも僕がマンタにお願いしてここを僕に歌わせてって言ったのもあったし、あと僕たちが茂にお願いをしてここのメロディを歌ってくれないかっていうのもたまにあるし。 田家:ありますね。え、これ誰だろうみたいなのがありますもんね。 小原:基本的には自分たちで歌うようにはしてる。この曲は久しぶりにコロナ明けに旅行に行けるようになって、ロサンゼルスに親戚がいて兄の奥さんが亡くなっちゃったんですけど、3年間お墓参りに行けてなくて、L.A.に行ったときに友だちの家に泊まらせてもらって、お酒いっぱい飲んでうわーってなってみんなが寝た後にこっそりギターを借りて思いついた曲。 田家:あ、その場で。 小原:その場で。それがこの曲。 田家:お~、すごいな~! 英語のノリが気持ちいいのはそのせいですかね(笑)。昭和の生まれよっていう「よ」っていうのがいいなと思ったんですよ。 小原:あ~、べらんめえな感じ。 田家:それは口から出ちゃった感じ? 小原:そうですね。手鼻をビュって擤 (か) んでる感じですかね。 田家:昭和生まれのロックというのは何かありそうですかね。 小原:理想かどうかはわからないけど、僕らは昭和の生まれなので、昭和生まれはこういう感じなんだよっていう。無理してMJみたいに踊りたいけど、もう頑張らないでいいかみたいなね。そういうテーマっていうか。 田家:SKYEは昭和のロックのある種の集合体みたいな。これが昭和のロックなんだぜみたいなのがあるんですかね。 松任谷:自負はないと思いますけれど、すごく原色でロックを聴いてきちゃったのかなっていう感じはありますね。 田家:自負はないんだけれども、聴いた人がそういうふうに思えるようになってくれるといいなみたいな。 松任谷:それは小原がそう思うかもしれない(笑)。僕はそこまでロックンロールじゃないんだよね(笑)。 Wire Walker / SKYE 田家:作詞が林立夫さんで、作曲が松任谷正隆さん。この茂さんのギターのちからの抜け具合と、この職人芸の素晴らしさって言うんですかね。 松任谷:そうですね。なんか僕も好きです。 田家:この曲を書かれたときというのは? 松任谷:これはレゲエもいいかなみたいな。SKYEでレゲエをやると、どういうレゲエになるんだろうなって。SKYEに曲を書くときは、実験をするみたいな気持ちがいつもありますね。どんな色になるんだろうとか、どんなサウンドになるんだろうってわからずに動いていく感じがあるので。これもそのうちの1つですね。 田家:そういう意味では松任谷さんのキャリアの中で、ここまでのバンドはないわけですもんね。 松任谷:そうですね。初めて。だから、すごくおもしろい。 田家:松任谷さんがSKYEに加わるときに自分の中でやってみたいバンド、自分がやるとしたらこういうバンドなんだというイメージ、理想みたいなものがおありになったわけでしょう? 松任谷:キャラメル・ママというバンドがそうあるべきだと思っていたんですよ。そうできなかった不完全燃焼分が全部このSKYEにいっている感じですかね。 田家:アルバムはありましたけど、すぐティン・パン・アレーになっちゃいましたもんね。 松任谷:はい、そうですね。 田家:そのときはご自分で歌うってことも頭に会ったんですか? SKYE入ったときには。 松任谷:キャラメル・ママでもそうしようと思っていたんですけれどね。なんかそういう感じじゃなくなっちゃって、それがもうすごく嫌で。だから、ここは下手でもやるぞーみたいな(笑)。 田家:すごいですね。何年経っているんだって。「Wire Walker」ってどんなイメージなんだろうと思ったんですけど、綱渡り芸人ということでいいんでしょうか。 小原:そうでしょうね。林は今回7曲書いてるってことじゃないですか。林の詞ってわりと世界を創造してくるのよね。世界を造るという傾向が最近あるのかなと思って。自分の周りの小さなことを話すというよりも、イメージを構築して物語を創るっていうところにいるのかなと思って。 田家:それが小原さんとのカラーの違いにもなっているんだろうなというアルバムですね。