松任谷正隆と小原礼が語る、前人未到のバンドSKYEの最新アルバム『Collage』前編
モンキーズショーのアイドルバンドのPVみたいなのをイメージしながら作った
Scarabaeid / SKYE 田家:SKYEの2枚目のアルバム『Collage』の2曲目「Scarabaeid」。作詞が林さんで作曲が小原さんと松任谷さんと鈴木さん。これも全員共作ですね。クレジットの順番が違ってましたね。 松任谷:あー、そうなんだ。 田家:「ホームアゲイン」は鈴木さん、小原さん、松任谷さん。こっちは小原さん、松任谷さん、鈴木さん。 松任谷:これね、でもね順番はないと思います。この曲に関しては。みんなでジャムセッションみたいな感じで作ったので。ただこれはちょっと実験的だったんです。僕らにとって。僕らは例えば小原だったら全部自分で詞まで書いちゃえるじゃないですか。僕もそれできちゃう。 田家:ええ、そういう曲が多いです、今回。 松任谷:リレー形式みたいなやつもやった。で、これ最後にやった曲なんですよ。みんなで0から作ったらどうなるんだろうっていうのが見てみたかったんです。 小原:録る前に1時間ぐらいみんなでああじゃない、こうじゃないって言って、キーはどうしようとかリズムはどうしようとかって言いながら、なんとなくやっていって。それで小原適当に歌ってよってマンタが言って(笑)。それで俺が適当になんか歌って。それから林がそこから僕のデタラメ英語みたいなのにインスピレーションを受けて、詞を書いて。 松任谷:でも、小原の一言も入ってるんだよね。 小原:そうそうそう。アグリー・ダックリングが入ってる。あれが最初に出てたんだ。 田家:枯れ具合とツボの具合というのが、実に絶妙にコール&レスポンスで収まっているみたいな感じがあったんですけど。 小原:そうね。あと、茂のギターがこれすごいかっこいい。 田家:「Scarabaeid」というこの言葉は林さんの中にはあったんですか? 小原:いや、この間林が僕に言っていたのは、ギターダビングしていて、ジャジャジャジャジャジャジャーン♪っていうフレーズを入れたんですよね。それが、こがねむしは~♪って聴こえたって言って、そこから浮かんだって言ってました。 田家:そういうのがなかったら出てきませんもんね。 松任谷:大体これこがねむしじゃなくて、コガネムシ科っていうふうに辞書を入れると出るんですよ。 田家:あ、そうなんですね。コガネムシ科という科があるんですか。 松任谷:科があるらしい。コガネムシって入れると、違う英語が出てくる。 小原:あ、そうだよね。昔スカラベって言ってたよね。 松任谷:そうだっけ。 小原:スカラベっていうふうには言ってたの。そこでヨーロッパなんだかアメリカだか忘れたんだけど、スキャラビードっていう単語は僕もあまり馴染みはなくて(笑)。 田家:ですよね(笑)。あまりみなさん馴染はないかもしれない。 小原:歌詞に入ってるから、まあいいかと思って。 田家:岩を揺らすのさ、このままじゃ収まらないっていうのはこれは? 小原:これはたぶん僕の想像ではロックンロールのことを言っているんだと思うんです。ロックをロールするんだっていう。 大丈夫~It’s not too late / SKYE 田家:作詞が林立夫さんで、作曲が松任谷正隆さん。これを書いたときのことというのは? 松任谷:今回のアルバムを作る前に僕はR&Bをやりたいというふうに宣言はしていて。そのシリーズの中の1つなんですけれど、ただ書いているときは、みんなが登場するようなシーンをちょっとイメージして、それがなんとなくモンキーズショー覚えてます? あのアイドルバンドのPVみたいなのをイメージしながら作ったのを覚えてます。 田家:えー! ウィアーザ・モンキーズ!の(笑)。 松任谷:そうそうそう(笑)。全員がちょっとずつ歌うみたいな。 小原:エンジニア泣かせだね。 松任谷:そうね。で、ライブでなかなかできないという。 小原:ははははは! 田家:歌というのは、今回かなり考えられて曲を作られたりしているでしょう? 松任谷:でも小原も僕も共通で思っているのはちゃんと茂に歌わせたい。 小原:そう。なかなか実現しない。 田家:前作はインストゥルメンタルでしたもんね(笑)。 松任谷:そうね、あんなんじゃダメですよっていう(笑)。 田家:林さんは先に詞が来るんですか? 松任谷:いや、これは曲が先です。曲が先で詞ができて、僕が詞を見たときにちょっと違うかもしれないなと思って。その詞用にもうちょっと暗い大人っぽい曲をつけようと思ったんだけど、林はこれじゃないとやだって言って。 小原:マンタがそれで林の詞でデモを歌って、林に聴かせて、また詞を変えてくるんだよね。それでまたそれを歌い直さないと、いけなくて、それを5回ぐらいやってるんだもんね。 田家:そんなにやってるんですか。 小原:この曲とか、何曲もあったよね。 松任谷:何曲も。毎回です。やつはかなり完全主義だっていうことはわかりましたけど。 田家:今回わかったっていう感じなんですか? 松任谷:そうですね。もうちょっといい加減だと思ってたんですけどね(笑)。 田家:アルバムは14曲ありまして、3人で書いた曲が3曲で、松任谷さん単独の曲が6曲、小原さん単独が5曲。林さん単独の作詞が7曲で、松任谷さん単独が3曲。小原さんが4曲。 小原:みんなでやってるっていう感じだよね、一人を除いて(笑)。 田家:それはそういう作り方にしようみたいなのがあったんですか? 松任谷:いや、そんなことはないけど、小原が書いたら僕が書いて、そしたらまた小原が書いてみたいなそんな感じがあって。 小原:タイプって言ったらおかしいけど、違う曲が出てくるので。なので、バラエティみたいなものをわりと感じてもらえるのかなとは思います。 田家:みなさんがお互いのバラエティを楽しんでいるみたいな感じもあるんですか? 小原:そういうところもあるかもしれない。 松任谷:ただ、頭の片隅ではSKYEっていうのを置いて作っているので、そういうところはちゃんと統一感は出ているんじゃないかなとは思うんですけれども。