「ライフワークは災害支援」能登からウクライナまで、世界の被災者のために奔走する建築家・坂茂氏【世界文化賞】
紙の建築、という独自の構造を開発し、美しい建築物の数々で世界にその名をとどろかせる建築家・坂茂氏。実はもう30年以上も災害支援を続けている。「地震で人が亡くなるのではない。建物が崩れて人が亡くなる。だから建築家の私たちに責任がある」との信念からである。 【画像】被災者支援をライフワークとする坂茂さんの活動の“ルーツ”と軌跡 今年の高松宮殿下記念世界文化賞の建築部門を受賞するのは坂茂さん。受賞者発表の記者会見で「建築家は特権階級の仕事をすることが多いが、災害にあわれて家を失った方々のため、世界のために活動を続けていきます。この賞がそれをさらに勇気づけてくださった、と考えています」と語った。その言葉を裏付けるように、坂氏は実に足繁く被災地を訪れている。 9月、坂氏の姿は能登の珠洲市にあった。地震の被害にあった建物の公費解体の申請締め切りが年末に迫り、すべてが取り壊されてしまう前に有効利用できるものを救おうと活動しているところだった。
能登瓦を救え!
「公費解体すると全部ゴミになって廃材になってしまう。伝統的なものを何とか再利用したいと考えて、能登全体で瓦集めをやっています。瓦屋さんが廃業してしまったので集めるしかないのです」という坂さん。 地震で本堂が倒れてしまった寺の屋根から剥がした能登瓦は、坂さんが手がける仮説住宅の集会所の屋根などに再利用されている。
“仮設”住宅はぬくもりのある空間
坂さんはこの日、仮設住宅にも足を運んだ。既に被災者が入居しているが、そこには被災地でよく見るプレハブの仮設住宅とはまったく異なるぬくもりのある空間が広がっていた。 内装は木目で、差し込む太陽光線が柔らかに感じられる。また、住民と話す坂さんのまなざしはとてもやさしく、「お困りのことはありませんか?」と寄り添う姿勢がとても印象的だった。「ここにはずっと住めるんですよ」と坂さん。作っては壊す仮設住宅は終わりにすべきだ、と考えている。 こうした災害支援をライフワークとするようになった坂さんに少年時代からこれまでの歩みを聞いた。