駐日ジョージア大使 早大での就活が人生で最も辛かった…<絶対落ちる>最終面接を前に思いついた突破策とは
◆キッコーマンとの出会い そんな私がキッコーマンに拾っていただいたのは、学生向けの新卒採用枠ではなく、外国人採用枠でした。一般的な就活シーズンはとっくに終わっている時期に、たまたま見つけたのです。 私の父は発酵の研究もしていましたから、醤油(しょうゆ)という大豆を発酵させて作る調味料のメーカーに多少の縁や興味を感じなかったわけではなく、運良く最終面接まで進むことができました。 でもそれまでの経験から、面接にはあまりにも嫌気がさしていました。ほとんどトラウマと言っていいくらいです。 そこで私は「ここも絶対に落ちるから、代わりに弟を面接に行かせよう」と思ったのです。今から考えれば信じられない発想ですが、当時は面接に行くことをそれだけ無謀に感じていたのです。 7歳下の弟と私は髪の色が違いましたから、ドラッグストアでスプレーを買って弟の髪の色を私にそろえてもらい、スーツを着せました。ところが兄弟なのにあまりにも似ておらず、弟の見た目が幼かったため「これはムリだ」と我に返り、ダメ元で自分で面接に向かいました。そして奇跡的に内定をいただくことができたのです。 他の会社にはことごとく落ちたのにキッコーマンが採用してくれた理由は当時はまったくわからず、内定の連絡を受けたときは何かの間違いだとさえ思いました。 ただ、今思えば、それも相性というか縁だったと思いますし、採用してもらって感謝の気持ちでいっぱいです。なので、就活のアドバイスだけは私に相談するのはあまり相応(ふさわ)しくないかもしれません(笑)。
◆責任者になり、「無駄に思えたもの」の意味に気がつく 就職活動とその後の仕事そのものは、やってもやらなくても同じような無駄な仕事、事務作業だとばかり感じました。 日本の就活では学生にエントリーシートや面接で膨大な作業をさせるわりに、そこで出てくる回答の多くが本音ではないことを企業側もわかっています。 多くの人が遊んでばかりだった学生生活から、瞬時に「就活モード」を取り繕(つくろ)う日本人には、ある意味で感心させられました。 しかし、今になって、無駄に思えたものにも実は意味があるのだと徐々に気づいてきました。私自身が、大使館のスタッフに「やっても無駄だ」と思われても仕方ないような仕事を振る場面が出てきたのです。 ひょっとしたらやらないほうが労力もかからず、良いかもしれない。しかし無駄だと明確に言い切ることができず、むしろそれをやりきることによって成果に微妙な差が生まれる、という作業です。 仕事の責任者になったことによって、当時は無駄じゃないかと感じていた就活での複雑な作業やキッコーマンでの仕事を肯定的に見ることができるようになりました。これには自分でも驚いています。 とはいえ、大抵の場合、企業の中途採用試験やアルバイトの採用ではもっと応募者も採用者側もフランクで、試験や面接の内容も簡素なのですから、新卒採用もあそこまで儀式的である必然性はないでしょう。 もう少しスピーディに、応募者にとっても採用する側にとっても少ない負担でマッチングするやり方があるはずです。 ※本稿は、『日本再発見』(星海社)の一部を再編集したものです。
ティムラズ・レジャバ
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