iPS細胞やES細胞だけじゃない…細胞治療でいま大注目の「間葉系細胞」の「意外な正体」
臍帯から細胞を増やす理由
同社ではへその緒から間葉系細胞を採取している。これには理由がある。 「へその緒のは細胞治療にとって重要な組織となりつつあります。ゼロ歳児の組織ですので、成人由来の組織に比べて年齢によるバラつきがない。しかも胎児側の組織なので、骨髄や脂肪など成人由来の組織に比べて細胞の増殖能力が桁違いに高いのが特徴です」 へその緒が使えるなら胎盤も、と思うが、胎盤には母親由来の細胞も交じるため、組織の精度が低い。細胞の量産には、へその緒が一番使い勝手がいいわけだ。 「へその緒は1本20~35センチもありますが、保存しやすく、製造する立場からは扱いやすいという利点もあります」 また免疫反応をあまり考えなくていいというのも利点だという。 臍帯由来の間葉系細胞の場合、抗原の一部が細胞の表面に出ていない。つまり免疫拒絶反応が起こらないため、誰にでも使えるのだ。 臍帯を細かく刻み、培養液に入れておくと間葉系細胞が染み出して増殖を始める。 「最初小さいシャーレから徐々に大きくしていって、植え継いで植え継いで大量に細胞を培養するんです。大体3週間くらいかかりますけども、3週間で1本のへそのほうから3600バック分の製品ができるスケールアップが確立しています」 3600バックというのは患者数に換算すると300名分に相当する。医療廃棄物として処分されるへその緒で、300名分の細胞製品が生まれ、免疫疾患で苦しむ人たちを救うことになる。 なお細胞治療は注射のみで行う方法が普及している。患者への負担はとても少ない。 「体重50キロの患者さんだったら200万個×50で1億個、この細胞を患者さんにゆっくり時間をかけて注射します」 急性の疾患であれば中2日空けて週に2回投与する。それを2週間続けて、まだ効果が不足する場合にはさらに2週間投与するというのが基本となる。 「1時間くらいリラックスして、本当に点滴を打つ要領で打てますので、外来も十分治療が可能です」