なんと、上りと下りでは、効果が違った…! じつは、山を登るのは「有酸素運動の最高峰」だった、という「じつに、納得の理由」
登山人口は年々増加の一途をたどり、いまや登山は老若男女を問わず楽しめる国民的スポーツになっています。いっぽう、登山人口の増加に比例して山岳事故も増えており、安全な登山技術の普及が喫緊の課題となっています。 【画像】体脂肪の減量効果…ダイエット+運動が効果的「登山なら月イチで大丈夫」 運動生理学の見地から、安全で楽しい登山を解説した『登山と身体の科学 運動生理学から見た合理的な登山術』(ブルーバックス)から、特におすすめのトピックをご紹介していきます。 前回の記事で、登山における減量効果や体力低下の予防効果を見てましたが、登山の身体へのプラスの影響は、もっと多岐にわたるそうです。しかも、上りと下りの組み合わせとなる登山は、その影響も上りと下りでは違う効果が得られるということです。今回は、この違いについての解説をお届けします。 *本記事は、『登山と身体の科学 運動生理学から見た合理的な登山術』(ブルーバックス)を再構成・再編集したものです。
登山は、上りと下りで生じる効果が違う
前回の記事では、登山が身体にあたえるプラスの効果のうち、体脂肪の減量効果や体力低下を予防する効果について見てみました。プラスの効果はほかにもまだありますが、長くなるので省略し、それらの要点をまとめて図「登山が健康や体力の改善におよぼすさまざまな効果」のような模式図にしました。 登山のユニークな性質として、上りと下りで生じる効果が違う、ということがあげられます。 上りでは心肺系に対して、下りでは筋骨格系に対して、より大きな運動刺激をあたえ、バランスのよい体力づくりができるのです。
さらに、筋骨格系では、上りと下りとで効果が異なる
筋のことだけについて考えてみても、上りと下りとではその効果が異なります。 人間の筋は、肉眼でやっと見えるくらいの、細い筋線維が束ねられてできています。筋線維は図「筋線維の顕微鏡写真」のように、持久的な運動向きの遅筋線維と、瞬発的な運動向きの速筋線維の2種類があり、両者が混ざって1本の筋が形作られています。 登山の場合、上りでは遅筋線維、下りでは速筋線維が主に使われるため、どちらの筋線維も鍛えることができます。この点、平地ウォーキングでは遅筋線維を中心に使い、速筋線維はほとんど使われません。このことからも、登山はバランスのとれた運動だといえるのです。