マキタスポーツ「ロビンソン酒場漂流記」インタビュー「ずっと肩を温めていて“よし来た!”と」
――どんなお店と出合いましたか? 「例えば仙台での仕事の終わりで、『1人じゃちょっと怖いけど、一緒に行こう』と、一緒にいたマネジャーも引っ張って行きましたね。そこは中が全く見えないんですよ。それで、ちょっと耳を澄ますと中から少しだけ声が聞こえてきてので、『ここにしよう』ととりあえずマネジャーを先に行かせて。それで、カウンターに2人ぐらいお客さんいらっしゃったんですけど、入った瞬間、お客さんが黙っちゃうんですよね。その瞬間は、『申し訳ないことをした』みたいな感じの空気なんですけど。そこはおでん店だったものですから、ドキドキしながらおでんなどをいくつか注文して、いただいて。そうすると、カウンターの中にいらっしゃるママさん的な方とお客さんのやりとりが始まるので、耳をそば立ててその会話を聞きながら、黙ってお酒をいただくという」 ――緊張感がありますね…。 「あるいは、豊橋でロケをやった時にも、中が全く見えないスナックに、『えーい!』と思って飛び込んだことがあったんです。その時は、三角帽を被ったお店の女性の方が、お客さんの膝の上に座って、マラカスを持っていたんですよね。カラオケがある店だったんですけど、ガテン系の方が、『とんぼ』を絶唱していたんです。分かりますよね、この雰囲気(笑)。『やばい』と思って…『とんぼ』はもう止まっちゃっていますし。『本当にすいません』って。ああいうところって、ママと常連のお客さんとかが悪口を言い合っていたりするんですよ。その、悪口を言い合ってるので、こっちのよく知らん者をけん制してくるんですよね。『ここの料理はまずいからな』みたいな、言わなくていいことを常連さんがおっしゃって、『まずいのはお前の顔だろ』みたいなことをママさんが言っているっていう。『多分こっちに向けているんだな』と思いながら。それで、ちょっと笑って見せたりすると、仲間だって思っていただける感じになるんですよね。あと、カラオケのある店だと、絶対“長”がいるんですよ。そのトライブ(共通の趣味やライフスタイルを持った集団)の長が誰かを見定めながら、その長のおはこを選んでしまうとマズいんですよね。だから、無難なものを選んでみたりとか。選曲をするのも、ピリピリ考えながら、『俺は一体何しに来たんだろう…』と思って。でも、そうやってだんだん打ち解けていく感じが思い出にはなりますけどね。地方に行った時はそういうことをしています」