マキタスポーツ「ロビンソン酒場漂流記」インタビュー「ずっと肩を温めていて“よし来た!”と」
――ちなみにですが、飲みの師匠というべき方はいらっしゃいますか? 「志村けんさんに、飲み方ではすごく影響されました。ある時、志村さんと共演をさせていただいた打ち上げの席で、 緊張しつつその日の仕事の内容について相談を持ちかけながら、志村さんの空いたグラスを手に取って、焼酎の水割りだったので、焼酎を足して、水を足して、当然マドラーでかき混ぜて渡そうと思ったら、志村さんが『待て!』と言うわけですよ。『混ぜるとみんな味が同じになっちゃうだろ』とおっしゃったんですよね。志村さんが言うには、『混ぜないでいることで、ゆっくりと味が変化してくんだよ。氷が溶けて味が変化していって、その一つのグラスの中でも味の変化とグラデーションがあるので、それを楽しみたい』って。『この人本当に酒に対してスケベだな』と思った(笑)。たった1杯の焼酎の水割りだろうが、変化していくものを見逃さず味わい尽くそうという態度。 僕は今までそういった気分でお酒を飲んでいなかったことに気付かされましたね」 ――志村さんから学ばれたんですね。 「その時に、志村さんが僕に対して駄目出しをしてくださったんですが、『お笑いっていうのはライブなんだから、カメラさんに合わせてお前が動きをするのではなくて、こっちがドキュメンタリーでやっている雰囲気を向こうにのぞき見させるようにして撮らせるんだよ。そういう、変化していくことに注意を払って感じていなさいよ』ということを志村さんはおっしゃっていて、コントというものをすごく楽しんでおられた人だったんだなと、非常に感銘を受けました。それから私は、蒸留酒は一切混ぜません! 混ぜないでいただくことで変化を楽しむっていうのは、志村師匠に教えていただいたことでした」 ――すてきなお話ですね! ところで、この番組のようにBS局には趣味嗜好(しこう)に特化した番組や街ぶら番組が多いですが、そういった番組の魅力についてお聞かせください。 「BSは僕らの味方ですよ。中高年が安心して見られる。目抜き通りにある大型のお店みたいなものが地上波ならば、ちょっと裏路地感があるのがBSじゃないですかね。僕もいろいろレギュラー番組やってきてはいますけれど、こういうBSの飲み歩き番組で声を掛けていただいたことの縁・運命みたいなものは感じますよ。それで現場に行くと、スタッフの全員おじさんなんです(笑)。僕と同年代が1番若いぐらいで。『テレビ界のシニアリーグがここにあるな』という感じで。見ている人たちもおじさん・おばさんならば、作っている人たちもそうだったっていう実態が味わい深かったですね」 ――その中にご自身の番組が仲間入りするというのは…? 「必然ですよ。僕は視聴者としていろんな番組を見て、いろんなスターを見て、っていう時代を経験しているんですよね。多分1番いい時期を視聴者として見て、かつ僕は90年代末期にテレビなどに、うっすらですが、出始めるということを経験して。それから、メディアの変質・変化とともに、僕自体も年をとって経年変化をし、そこに迎え入れていただいている。(番組の)ターゲットになっている方たちも、僕と同年代あるいはそれ以上の方たちっていうことですよね。こうやって年を取って、楽しみ方も変化していますが、楽しむメディアとかも用意されているんだっていう感覚をひしひしと感じていますね」