サッカーJ1名古屋グランパスの観客動員がV字回復 その理由は?
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サッカーJ1・名古屋グランパスのホーム戦に訪れる観客数が、近年増え続けている。 ホームスタジアムであるパロマ瑞穂スタジアム(名古屋市瑞穂区)と豊田スタジアム(愛知県豊田市)で行われたリーグ戦とカップ戦を合わせた観客数は、J1初優勝を決めた2010年に年間35万4182人を記録した後は30万人を切る年もあった。しかし、2014年に30万人を回復。J2に降格した2017年も年間観客数は32万人と前年より増え、さらに今年は9月15日現在でこれを上回る33万人超で、3年連続の増加となった。
今年、瑞穂よりも収容人数が多い豊田で開かれた試合のうち3試合の観客数は、それぞれ3万8000人を超え、同スタジアムのJリーグ戦歴代観客動員トップ10入り。特に、8月11日の鹿島アントラーズ戦は、リーグ最下位の成績で迎えながらも来場者数は4万3579人を数え、リーグ戦とスタジアムの最多観客動員数を更新した。何が観客をスタジアムに呼びこむのか、理由を探った。
突きつけられた数々の「最下位」データ イベント評価も曖昧だった過去
グランパスにとってターニングポイントとなった年は2014年。前年に年間観客動員数が30万人を下回り、てこ入れの必要に迫られていた。Jリーグは毎年、観戦者を対象にした調査を行い、その結果を公表しているが、ホーム戦のイベント運営を担当していたクラブスタッフの戸村英嗣イベントMDグループリーダーは同年の調査結果を見た時のことを「ショックでした」と苦笑いしながら振り返る。 観戦者が来場した動機について「好きなクラブの応援」と答えた割合は、J1の18クラブの中で最下位。クラブに対する見解として「周囲で話題になっている」、「ホームタウンで大きな貢献をしている」を聞いた項目もそれぞれ最下位だった。さらに「スタジアムでのイベント・グルメ企画が楽しそうだから」もJ1で17位。散々たる結果だった。 この年のチーム成績はJ1残留の10位。つまり試合の勝敗のほかにも、ホームタウンの人たちやサポーターに来場してもらうにはどうすればよいのか、再考せざる得ない状況に追い込まれていた。 ただ、いざ見直しを進めようとするも「観客の顔が見えていなかった」(以下、戸村さん)ことに気づく。当時、観戦チケットはコンビニの専用端末で買うサポーターが大半を占めており、どんな人がチケットを買ったのかなどの購入者データが、クラブ側にはなかった。さらに、スタジアム来場者に感想を聞くような調査もしていなかった。 「テーマを設けたイベントをしても、やったら終わり。スタッフ間で『盛り上がったから良かった』みたいに、評価も曖昧だった」